『逃げ恥』は2021年の今見ても先進的だった。続編のテーマを、原作漫画から考える
令和の時代に見ると?
家事は、企業などでの労働と比べると、下位に置かれるものなのか。 家事に対する報酬は? パートナー間でどう分担するのか。 「愛があれば、なんだってできるだろう」と愛情を過信し、パートナー間に発生する不平等な状況に向き合わなくていいのか? 従来の婚姻制度に縛られない結婚観は、許されないものなのか。 年齢を重ねると、「女性の価値」は失われるのか。 『逃げ恥』が問いかけたこういったテーマは、令和の時代に突入してからもたびたび議論になってきた。 特に「男は仕事、女は家庭」という旧来的な性別役割分業への意識は、日本ではいまだ根強く残っている。こうした現状に対する『逃げ恥』のカウンターとしての側面は、今もまったく色あせていない。 「逃げる」ことを肯定的に描いていた点も画期的だった。「逃げるは恥だが役に立つ」とはハンガリーのことわざ「Szegyen a futas, de hasznos」で、「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」という意味だ。 世間で「正しい」とされる価値観を押し付けられることに飽き飽きし、そこから逃げようとする人々を肯定的に描いた『逃げ恥』。闘うのではなく、自分のために逃げてもいいという多様な生き方を示した。
続編は妊娠・出産。「育休」や「ホモソーシャル」問題も
(※この先、スペシャルドラマのベースとなる原作10・11巻のネタバレがあります) 漫画家・海野つなみさんによる原作の10巻・11巻は、ドラマ放送後の2019年から続編として発表された。みくりと平匡の結婚2~3年後、みくりが妊娠し、出産するまでの期間が描かれている。 スペシャルドラマはこの2巻をもとに制作。メインビジュアルには、ドラマの鍵となるという言葉が並んでいる。「育休取得」「ホモソーシャル」「選択的夫婦別姓」「LGBT」など、2021年の今まさに語られているテーマも多く、また、「緊急事態宣言」「パンデミック」などの言葉があることから、ドラマオリジナルとして、コロナ禍の状況も描かれることになりそうだ。 原作では、みくりと平匡は2人とも新しい職場で働いている中で、みくりの妊娠がわかる。妊娠や出産というテーマを通じて、男性中心の会社でのコミュニケーションのあり方の課題などが見える描き方で、ジェンダーの問題についても踏み込んでいる。 前作のドラマでは、主にみくりなどの視点から見た女性をめぐる不平等な状況に焦点を当てていた。 原作の10巻・11巻では、新しい職場や妻の妊娠・出産を、平匡の視点からも見せている。男性の育休取得への風当たりの強さ、また「男らしさ」に固執し、弱みを見せることができない平匡を通し、男性をめぐるジェンダーの問題についても描いている。 ドラマの脚本は、前作から引き続き野木亜紀子さんが担当している。『逃げ恥』以降、最近ではドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)や『MIU404』(TBS系)、あるいは映画『罪の声』などで男性主人公の作品も手掛けてきた野木さんの手腕にも注目だ。
ハフポスト日本版