『逃げ恥』は2021年の今見ても先進的だった。続編のテーマを、原作漫画から考える
2016年に社会現象になったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、『逃げ恥』)のスペシャル版『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』(TBS系列)が1月2日に放送される。(ハフポスト日本版・若田悠希) 【動画】『逃げ恥』スペシャルドラマの予告編 スペシャル版に先駆け、1月1日・2日には、前作が全話一挙放送。実はまだ『逃げ恥』を見たことがないという人も追いつくチャンスだ。 「契約結婚」や「愛情の搾取」、あるいは家事の経済的価値など、社会問題にも踏み込んだテーマと多くの名言を生んだ本作。4年越しに令和の時代に見返しても、『逃げ恥』はやっぱり先進的だった。
秀逸だった「呪い」の描き方
『逃げ恥』が生んだ名言のひとつに、みくり(新垣結衣さん)の叔母・百合(石田ゆり子さん)の「自分に呪いをかけないで」があげられるだろう。 年下の女性から、百合は「おばさん」と呼ばれ、「50にもなって若い男に色目を使うなんて虚しくなりませんか?」と言われると、彼女はこう答える。 「今あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来でもあるのよ。(中略)私たちの周りにはたくさんの呪いがあるの。あなたが感じているのもその一つ。自分に呪いをかけないで。そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」 百合が「呪い」と呼んだ、人を縛りつける先入観や固定観念。この考え方はドラマの世界を飛び越え、多くの人々の共感を呼んだ。百合のこの言葉によって様々な「呪い」が可視化され、そこから自由になろうとする人々の背中を押したのではないだろうか。 「呪い」に縛られていたのは、みくりも平匡(星野源さん)も同じだ。 『逃げ恥』では、夫の平匡が雇用主、妻のみくりが従業員として、家事労働に給料を支払う「契約結婚」を始める。 就職活動に全敗し、大学院卒業後は派遣社員として働くも、自分だけが派遣切りにあってしまうみくりは、「自分は選ばれない」人間なんだと思い込むようになる。 みくりは自分が他人から都合よく搾取されることに敏感で、自分の意見を主張したり異を唱えたりすると、「小賢しい」と批判されることもあった。「小賢しい」という言葉は、呪いとなってみくりを苦しめてきた。 平匡もまた、恋人がいた経験がなく「プロの独身」を自称。結婚は「自分には縁のない」ことだと、心に入り込もうとするみくりを拒む。みくりが「自尊感情が低い」と分析すると、平匡は「詮索するのも分析するのもやめてください」と怒りを向ける。 「ムズキュン」とキャッチコピーがつけられた2人の恋愛。平匡の「システムの再構築」という言葉どおり、『逃げ恥』というドラマは、既存の結婚制度やパートナー同士の関係性を見直し、ことあるごとにみくりと平匡が議論と考え方のすり合わせを重ね、2人が快適でいられる関係を模索する物語だった。それが、互いの「呪い」をとくことにも繋がり、2人は最終回で正式に夫婦になった。