思い描く女性をどれだけ素敵にできるか、それがデザインの仕事【Penクリエイター・アワード 黒河内真衣子】
Pen クリエイター・アワード、2021年の受賞者がいよいよ発表! 今年は外部から審査員を招き、7組の受賞者が決定。さらに審査員それぞれの個人賞で6組が選ばれた。CREATOR AWARDS 2021特設サイトはこちら。 【写真】マメ クロゴウチのアイコニックな赤いドレスなど ファッションデザイナー・黒河内真衣子の仕事の根本にあるテーマは、女性を素敵に見せる服づくり。自身のブランドであるマメクロゴウチ(以下マメ)は、美しいプリンセスに憧れる少女のファンタジーに寄り添う服だ。そして、着る人の心を支え、背筋を伸びるようにさせる大人の服でもある。 黒河内は自分がデザインした服を、自ら着て愉しんでいるという。クリエイターとしてギリギリまで攻める創造性と、着る上でのリアリティとのバランスを、実際に着ることで見極めようとしている。同時に、ひとりのお洒落好きの女性でもある。彼女は言う。 「マメをいちばん着ている人は私自身。本当に私、マメの大ファンなんですよ。毎シーズン、『どれを着よう? どれを買おう?』と真剣に悩んでしまうほど」 ファッションデザイナーの資質をトレンドキャッチ型と作家型とに分けるなら、黒河内は間違いなく後者だ。流行を意識した服づくりはしない。確かに、パリコレに参加してショー形式で新作を発表し、先鋭ショップに並ぶマメは、時代とリンクするモードブランドとして位置づけられる。しかし黒河内自身は他ブランドに対抗心を燃やすことも、作家性を過度に押し出すこともなく、10年以上にわたり地道に服をつくってきた。洋服とは生地屋、縫製工場、染め・刺繍の職人、パタンナーなど大勢の仕事の集合体であり、マメの服は、日本各地の職人技の結晶である。だからこそ黒河内は人との共同作業や制作プロセスをなによりも大切にする。コロナ禍でファッション業界全体が疲弊した2020年から21年にマメが大きな飛躍を見せたのは、日本のモノづくりに関心をもつ人が増えたことが背景にあるのかもしれない。黒河内自身はなにも変わらなくても、時代が彼女を必要としているのだ。