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ゼロリスクにできない新型コロナとの向き合い方 川崎市健康安全研究所所長に聞く

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緊急事態宣言解除後、第2波がやってきて、第3波、第4波を懸念する声もありますが、今後、私たちは新型コロナとどう向き合えばいいのでしょうか。政府や知事にリーダーシップを求める声もありますが、私たち個人にできることもあるはずです。新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員で川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんは、ゼロリスクにはならない。正しく怖がることが大切だと言います。 【写真】豊田真由子がいま伝えたい3つのこと ■新型コロナはゼロリスクにはならない ――緊急事態宣言解除後、第2波がやってきましたが、経済を回すことと感染拡大を防ぐことの両立が難しいように思います。 岡部信彦所長(以下、岡部):ゼロリスクを期待して緊急事態宣言を解除したのではありません。完全に排除できると言った人もいましたが、残念ながら新型コロナはゼロリスクにはできない。そのことを受け入れながら、共に生きていくという考えが必要ではないでしょうか。 人の命と生活、どちらも大事なのですが、ゼロリスクを獲得しようとすると今度は社会生活や経済が立ち行かなくなります。感染者ゼロを目指す、もしくは数字の上で人口十万単位で0.5人を超えたら危ないというのではなく、常に医療機関がどっしりと機能している状況であればよいのではと思います。 一方で、たとえ患者が少なくても医療機関が機能不全に陥ってはいけませんし、患者が増えても、医療機関が機能していれば大丈夫なのです。 緊急事態宣言をした当時は病棟が満床になっていて、新たに患者を受け入れることが困難になりそうでした。たとえば、毎日20床ベッドが空いても、毎日25人が入院してくるという状況だったのです。さまざまな経験を経て、緊急事態宣言中と解除後では状況が変わり、解除前に比べて受け入れ態勢や検査態勢、治療法などが整ってきました。 しかし、だからといって100人、200人と患者が増加してもいいということではなく、できる限り検査陽性者数は少なくしたほうがいいので、クラスター対策をし、軽症の人はホテルに隔離しています。感染が広がらないよう、努力をしなければなりません。 ■特別なことをする必要はない、応用問題を解く力が必要 ――さまざまなシーンで、してもいいこととしてはいけないことが分かりにくいです。 岡部:ノロウイルスの場合でも「もっとちゃんと手を洗ってください」と言っているわけで、ノロウイルスと似ているところがありますが、違うのは、呼吸器の感染症は人と人が近づくことによってうつりやすくなるということです。 三密を避けるとリスクは減ります。しかし、感染を恐れて医療機関に行かず、健康診断を受けないとか子どもの予防接種を受けないというのは違います。かかりつけの先生に相談し、すいている時間帯に受診して、健康診断を受けたり、必要な予防接種を受けたりしてください。運動不足解消のためジョギングをしようとして、マスクをつけてジョギングして、暑くて苦しくなって倒れたら本末転倒です。どちらがリスクが高いのか考えてみてください。 ――シーンによって臨機応変に考える必要がありますね。 岡部:人と2m前後以内の距離にいる時は、飛沫を浴びる可能性があるのでマスクをつけますが、あまり人がいないようなところで散歩する場合は、飛沫を浴びる機会はほとんどないので、マスクを外していいのです。ところが、外に出る時はマスク、マスクと、誰もいないのに一人でマスクをつけている人も見かけます。日本の人々はすごくまじめで「外出する時はマスクをしよう」とほとんどの人がマスクをつけていますが、応用問題を解いてみてください。炎天下、蒸れたマスクをつけているほうが危ないこともあるのです。 ■過剰に心配しない。正しく心配する ――応用問題を解くにあたり、知っておくといいことはありますか。 岡部:本来人間は、本能的に、あるいは状況を理解して行動します。しかし、何をしていいのか分からない場合は基本的なことをしなければいけません。 外出する時、ウイルスがいっぱいいそうなところに行くのは避けましょう。どうしても仕事や用事で人が集まるところに行かなければならない時は、マスクをつけます。しかし少し距離をおいて会えば、マスクを外してももよい場合があります。食事をする時はマスクを取りますが、少し間隔を開けるとか正面に座らないようにして、普通に話せば、リスクは下がります。 ――友人と会ってもいいのでしょうか。 岡部:ずっと会うなとは言っていないのに、心配し過ぎている人が多いのです。正しく心配すればいいのに、「正しく」が飛んでしまって心配し過ぎてしまう。あれもこれもやってはいけないと思うと、何もできなくなってしまいます。ここまではやってもいいという考えを持つことも大切です。 今年の花見は、人がいっぱい集まるから危ないという報道がありましたが、私は3月に花見に行きました。人がいないところに行きました。意外と隠れた名所もあるものです。人を見に行くのではなく、花を見に行くのですから…。 ――コロナ禍、常に見えないストレスにさらされている気がします。 岡部:本来、人の生活の周りにはいろいろなリスクがあります。交通事故のリスクだってそうです。新型コロナウイルスに対して大変不安な気持ちになってしまう人が多いと思いますが、そういう人に「そうだそうだ、大変だ、危ないからもっと我慢しよう」と言うと、もっと辛くなってしまいます。できないことを探して、あれもこれもだめだと言うのではなく、できることを探して、新しい楽しみを見つけるとよいのではないかと思います。 ◆岡部信彦(おかべ・のぶひこ) 川崎市健康安全研究所(旧称:川崎市衛生研究所)所長。昭和46年慈恵医大卒。平成3ー7年WHO西太平洋地域事務局(フィリピン)伝染性疾患予防対策課課長。帰国後慈恵医大小児科助教授、平成9年国立感染症研究所感染症情報センター室長、平成12年感染症情報センター長、平成24年川崎市衛生研究所所長。厚生労働省国内麻疹・風疹排除認定委員会委員長。厚生労働省MERS対策専門委員会委員長。厚生労働省新型コロナウイルスアドバイザリーボード。内閣官房新型インフルエンザ等対策有識者会議検討会議委員長代理。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員。内閣官房未来投資会議議員。内閣府食品安全委員会研究評価委員会委員長。 (まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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