CLベスト4激突、バイエルンはバルサの「MSN」を止められるか
覇権奪回を至上命題に掲げるリーガエスパニョーラでも、バルセロナは宿敵レアル・マドリーに勝ち点2差をつけて首位を走っている。8対0で大勝した2日のコルドバ戦でも、スアレスがハットトリック、メッシが2ゴール、ネイマールも1発と『MSN』が揃い踏みを演じた。 スペイン国王杯を含めて、シーズン三冠の可能性を残している状況もバルセロナのモチベーションを高めている。水沼氏は「勢いを比較すればバルセロナが優勢となるが」とこう続ける。 「バイエルンのポゼッションを破るにはポルトが3対1で勝利したチャンピオンズリーグ準々決勝のファーストレグが非常に参考になる。バイエルンの最終ラインへ執拗にプレッシャーをかけ続けてミスを誘発したが、これは勤勉なポルトのFWだからできた作業だと言っていい。バルセロナの3人に同じことができるかどうか。対するバイエルンはブンデスリーガ優勝を決めた直後のリーグ戦で黒星を喫しているが、グアルディオラ監督は主力選手数人を温存。バルセロナよりも早くファーストレグへの対策を始めている」 0対2で敗れた2日のレバークーゼン戦。グアルディオラ監督はMFシャビ・アロンソとDFファン・ベルナトをベンチに置いたまま黒星を受け入れ、現状において攻守の柱となるFWトーマス・ミュラーとDFジェローム・ボアテングは招集メンバーからも外している。 さらには長く故障で離脱していたMFハビ・マルティネスを先発で、DFメディ・ベナティアを途中出場で起用。バルセロナ戦へ向けた試運転を終えさせた。 バイエルンが最終ラインやアンカーを中心にボールを回し続け、決して守備が得意ではないバルセロナの『MSN』がプレスをかけられない状況が続けば、バルセロナの中盤が業を煮やして前に出てくる。チームとしてのバランスが崩れれば、バイエルンが攻め込むチャンスが生まれる。 3バックの中央を務めるボアテングや、アンカーに入ると予想されるシャビ・アロンソらを心身ともに万全の状態でファーストレグへ臨ませるためにも、レバークーゼン戦を回避させたことは明白だ。 名門バイエルンにポゼッションの概念を初めて導入。わずか2シーズンで「3‐3‐3‐1」を軸に複数のフォーメーションを使いわける万能軍団に変貌させたグアルディオラ監督への厚い信頼感は、ミュラーが発したこの言葉が何よりも如実に物語っている。 「僕たちの監督は誰よりもバルセロナを知り尽くしている。きっと勝利に導いてくれるはずだ」 下馬評では絶好調の『MSN』を擁するバルセロナの優位は動かない。それでも何かを起こしそうな期待感を、鬼才に率いられるバイエルンは秘めている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)