オアシスの歴史に踏み込む「リヴ・フォーエヴァー:Oasis30周年特別展」見どころ徹底解説
このあとも充実…新旧ファンが殺到しそうな理由とは?
「第三章」は、先述した通りヴィジュアル・イメージを重視してきたオアシスの魅力が浮き彫りになる、アルバムやシングルの告知ポスター、ツアーポスターがずらりと並ぶ。デザインに一貫性があったクリエイション在籍時のポスターは、今見てもやはり秀逸。メンバー以外のスタッフも尽力し、「オアシスの世界」が形成されていく過程を一望できる興味深いコーナーだ。ケース内に雑然と積まれたツアーパスなどのメモラビリアも、時代の空気を生々しく伝えてくれる。 そして「第四章」では、オアシスの詞世界にフォーカス。いしわたり淳治が新たに翻訳した訳詞と向き合う、全体のまとめのようなコーナーだ。新訳詞はオアシスのパブリックイメージから距離を置いたニュートラルな視点で、難解にならない言葉のチョイスで綴られている印象。国や文化の違いを越えて共有できる、オアシスの歌詞が持つ普遍性が際立った点は新鮮だ。それこそが、彼らの楽曲が長い間色褪せることなく、現代のリスナーからも広く支持される「クラシック」になり得た理由だろう。専用の楽曲再生アプリ、S.Guide+を使用して展示該当曲を聴きながら鑑賞することも可能なので、特にこのコーナーでは同アプリが重宝する。また、併設されているシアターでは1996年のネブワース、2009年フジロック・フェスからの映像がほぼ週替わりで流されているのもお楽しみのひとつだ。ステージ上のメンバーになり切れるフォトスポットもあるので、この辺は混み合うことだろう。 そんな流れの中で、最後の最後にめちゃくちゃ盛り上がる「Don’t Look Back In Anger」のコーナーが用意されているのだが…ここで内容を詳しく説明するのは無粋だろう。詞・曲の世界に没入した状態でここにたどり着いて、存分にしびれまくって欲しい。 これまで述べてきたように、各コーナーの伝えたいことが明確で、起承転結も見事に効いている。いろんな角度から光が当てられそうなロックンロール・バンドの歴史を、決して一面的になることなく、作品の内面にまで踏み込んでしっかり見せようという主催者の気概が感じられる内容だ。その一方、基本的な情報もきちんと網羅されているので、非マニアのファンや新規ファンにも飲み込みやすそう。展示室の外にも2つフォトスポットがあり、『CHASING THE SUN: OASIS 1993-1997』で行列ができた『Definitely Maybe』のジャケットを再現したブースはもちろん、「Live Forever」のビデオでお馴染み、宙に浮いた椅子にリアムが座る場面を体験できるブースまであり、ここには新旧ファンが殺到しそうだ。 デビューから30周年を迎えた今、オアシスのファン層は彼らと同年代のリアルタイム世代から下は10代まで、かなり厚みが出てきた。インターネットで検索すれば彼らがどんなバンドで、どんな功績を残したのか瞬時に理解することができるが、そうした情報のみでは補い切れない生きたバンドとしての手触りと世界中の若者に響いた歌詞の魅力を、目に見える形で届けようとする意志が、この展覧会をビシッと貫いている。活動再開に伴って新しい「オアシス現象」がいよいよ始まろうとしているこのタイミングだからこそ、必然性のある展示テーマだと筆者は感じた。 会場内で販売されている30種以上のグッズは、バンドのロゴや写真の魅力をよくわかった商品ばかりで、ファンは頭を悩ませるだろう。アノラック・パーカーやトラックジャケットから、フットボールシャツ、各種Tシャツ、ショルダーバッグ、トートバッグなどは特に人気が沸騰しそうだが、安価なランダムバッジ、ランダムステッカーもファンのツボを心得たデザインになっているのが心憎い。 会場のショップ内では、先着で「公式プレイリストカード」を無料配布している。代表的な30曲をピックアップした2時間半を超えるプレイリストは、オールタイムベストとして楽しめるボリューム。これでみっちり予習してから展覧会へ行くと、細部まで味わい尽くすことができるはずだ。 【展示会情報】 リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展 会期:2024年11月1日(金)~11月23日(土) 会場:六本木ミュージアム 営業時間:10:00~18:00 ※11/1 (金), 11/2 (土), 11/3 (日) のみ10:00~20:00
Masatoshi Arano