他メーカーが見習うべき「優等生」 クプラ・ボーン ベストEV賞 AUTOCARアワード2024
手頃な価格で実用的なバッテリーEV
バッテリーEVにも、優れたメジャー・モデルが登場し始めた。これまでは、過剰に速いハイパーカーや大型SUV、流線型の高級サルーン、マイクロカーなど、比較的狭いカテゴリーに属するモデルが中心といえたから、歓迎すべき変化といえる。 【写真】ベストEV賞:クプラ・ボーン ベスト・コンパクト賞:ルノー・ルーテシア ID.3と5も (130枚) 実際、複数台をガレージへ保管でき、普段使いに有能なモデルを維持しつつ、特定の嗜好に合うモデルも所有できるクルマ好きを相手にした方が、過渡期のバッテリーEVを売るのは容易といえた。これぞという1台にクルマのすべてを求める、一般的な市民より。 それでも、CO2の排出量に応じて課せられる負担金を減らし、内燃エンジンからバッテリーEVへ販売の軸をシフトするうえで、最終的にはターゲットにする必要がある。より多い数をさばけ、シェアを拡大できるカテゴリーへ、手を出さない訳にはいかない。 つまりクプラ・ボーンのような、手頃な価格で購入できる実用的なモデルの重要性は非常に高い。数か月前のAUTOCARでは、4万ポンド(約800万円)以下で買えるモデルへ絞り、現在のバッテリーEVを比較したが、そこで優勝を掴んでいる。 候補はテスラ・モデル3やジープ・アベンジャー、ボルボEX30などツワモノ揃い。よりパワフルな例もあれば、安価な例もあり、長い航続距離が強みだったり、プレミアムさが売りのモデルもあった。それら12台に対し、ボーンは競り勝った。
多くの要素をバランス良く キラリと光る魅力も
ボーンは、すべての要素をバランス良く備えていた。不満ない実用性を備え、不足ない動的能力を宿し、賢明といえるパッケージングにあった。キラリと光る魅力も。 発売は2021年で、もはや新しいモデルではない。しかし、次々にニューカマーが登場する競争の激しいバッテリーEV市場で、絶妙なポジショニングに当初から位置したことが明らかになった。 生産ラインはフォルクスワーゲンID.3と共有している。新規に開発されたプラットフォームも共有している。ところが、ボーンの方がスタイリングはシャープで若々しい。インテリアの雰囲気は上級で、走りはスポーティに仕上がっている。 実際、販売数もID.3より多い。フォルクスワーゲンの技術者が頭を悩ませた、優れたパッケージングと電動パワートレインが同等に与えられているにも関わらず。 この違いを導いたのは、クルマとしての魅力という、数字化しにくい部分にあるだろう。より厳密に品質や機能、収益性を追求するがあまり、見落としがちになってしまう大切な部分といえる。