コロナのひずみ 突然の解雇通告「寝るところ欲しい」 生活困窮者の“命”と“暮らし”瀬戸際まで 福岡県
新型コロナによって仕事を無くし、生活の場さえ失った人たちがいます。 ある男性は2020年の夏、突然職場を解雇されました。 苦境に立たされている失業者の実態を取材しました。 毎週金曜日の夜、福岡市の冷泉公園で行われている「炊き出し」です。 この日、生活困窮者に無料で提供されたのは温かい「豚汁」。 コロナ禍で住むところを失った人たちの身と心を温めます。 ▼福岡おにぎりの会・郡島俊紀理事長 「(新型コロナで)人が密集してはいけないということで、暑さや寒さをしのげるショッピングセンターとか、図書館であるとかいう所に長時間、居れなくなっていますので、昼間にいる場所もない。特に天気の悪い時なんかは、しのげる場所が少なくなっていると言えますね」 この日、新型コロナが原因で職場を解雇されたという50代の男性と出会いました。 「いつ失業したんですか?」 ▼コロナで失業した男性 「去年の8月やったかな…5月くらいに宣言が出てからどんどん(給料が)下がっていった。昔は30万近くもらっていたんですけど、今はゼロです。だからこういうところでお世話になってます」 男性は、今から10年前、離婚をきっかけに故郷・熊本を離れ、福岡にやってきました。 2020年8月まで、調理施設で契約社員として働いていましたが、徐々に給料が減り、一方的に解雇されたといいます。 「コロナで困っていることは?」 ▼コロナで失業した男性 「寝るところが欲しいです。路上生活です。就労活動中ですが、家がないから、住所が定まっていないから雇わないんですよね…」 福岡市の生活自立支援センター。 生活や仕事に困った人を対象に支援を行う無料相談窓口です。 2020年3月までは19人体制でしたが、コロナ禍で相談が急増した影響で体制は3倍以上になりました。 「相談は多い?」 ▼相談員 「多いですね、新型コロナの影響と今回の緊急事態宣言後からも仕事先とかも解雇になったりとか、収入が少なくなった方がかなり増えてきている」 昨年度の新規相談件数が2020件に対し、今年度は2020年12月までで新規相談件数は19000件を超え、10倍近い数になっています。 ▼センターを運営するパソナ・荒木田宏司チーム長 「家賃が払えない、どうしたらいいかという相談が非常に増えている。現在も昨年の比率でいくとかなり多い形で、月に何百件という数が申請されている」 コロナによって生活の糧を失う大勢の人たち。 2020年8月に職場を解雇され、路上生活を続ける男性に、豚汁を食べた後の行く先を尋ねると… ▼コロナで失業した男性 「きょうは雨が降っているから葉っぱの下くらいで寝ましょうかね…」 「公園で?」 ▼コロナで失業した男性 「公園は雨が降るけんですね。きょうは寝るとこないでしょうね…」 男性の姿は、雨に濡れながらゆっくりと姿を消しました。 ▼福岡おにぎりの会・郡島俊紀理事長 「年末には久留米から仕事がなくなって来た方もおられたし、先週は家はあるけど仕事がなくなってしまったといういう話も聞きますし、そういう方々が精一杯踏ん張っているんでしょうけど、どこで踏ん張りがきかなくなるのか…」 新型コロナは、生活困窮者の「命」と「暮らし」をギリギリの瀬戸際まで追い込んでいます。
テレビ西日本