『レ・ミゼラブル』主演デビュー!新章に踏み出すミュージカル俳優・飯田洋輔の原点と今後の展望
東京藝術大学声楽科に学び、劇団四季のプリンシパルに。そしてまもなく開幕する帝国劇場クロージング公演『レ・ミゼラブル』では、ジャン・バルジャン役の新キャストにその名を連ねる。帝劇最後の主演デビューを飾るミュージカル俳優・飯田洋輔。磨き上げた歌唱と芝居が、いよいよ世に放たれる ミュージカル俳優・飯田洋輔インタビューフォトギャラリー
「ミュージカルを志す俳優なら誰もが目指すところであり、絶対に立ちたいと思う場所。歴史ある演目で、しかも今というタイミングでの出演が叶ったのは、本当に幸せなことだと思っています」 開幕を間近に控えたその心境を、飯田洋輔は折目正しい言葉で語った。2025年2月に建替えのため一時休館する帝国劇場、そのクロージング公演は帝劇の代表演目とも呼べる作品ミュージカル『レ・ミゼラブル』。ジャン・バルジャン役に新たにキャスティングされた飯田にとって、このステージは、ミュージカル俳優としての再デビューの場でもある。2004年から約20年間在籍した劇団四季では、創設者である故・浅利慶太から直接薫陶を受けた最後の世代のひとりとして、名作からディズニーミュージカルまで数々の作品に出演。『オペラ座の怪人』の怪人の孤独を体現し、『美女と野獣』ではビーストの心中に芽生えた無垢な愛を歌い上げ、多くの観客を魅了してきた。 「僕が活動を始めた時点でも、すでに日本にはミュージカルというジャンルが認知されていたし、劇団四季という組織があり、そこに入るだけで名作と称される作品に携わることができた。それもまた、本当に幸運なことでした。浅利さんから教わったのは、やはり劇団の基本的な理念である、言葉を大切にするということ。誰が演じてもその作品の持つ力をきちんと伝えられる『作品主義』の考え方は、劇団を出た今も、そしてこれからも、決して自分の中で変わることのないものだと信じています」 パンひとつを盗んだ罪で19年間投獄され、身も心も荒みきった男。司教の慈悲に触れ、神とともに生きることを決意したジャン・バルジャンの半生をドラマティックな楽曲と群像劇で綴る『レ・ミゼラブル』は、ミュージカルの金字塔とも呼ばれる名作中の名作。大学生の頃に初めて観劇し楽曲に魅了されて以降、出演は、飯田の中では大きな目標でもあった。40歳という節目の年代を前にして、自身の中で退路を断ちオーディションに挑戦。試されたのは、歌唱力や演技力以上に「野蛮性を表現できるか」だったと振り返る。 「外見ではなく、内面から滲み出る人間的な危うさのようなもの……僕個人からは遠い要素なので、その色味があるかどうかは吟味されていたのではないかと思います。しかし、妹の子たちを飢えさせないために罪を犯したバルジャンは、もともとは決して極悪人ではない。繊細で、コゼットに対する愛情に満ちた父親の側面も持ちながら、ふとした瞬間に過去の凶暴性も表れる振れ幅の大きい役です。自分が思っていた以上に心理描写が細かく、常に揺れ動きながら自分の行くべき道を模索し、選択してきたバルジャンの意志の力と正義感を強く感じました」 同時に、あらためて「曲を信じなければ」との思いも浮かんだと、飯田。もともとの声域はバリトンだが、歌唱する楽曲では強靭なハイトーンも要求される。稽古に入る前にニューヨークを訪れ、ミュージカル俳優専門のトレーナーのレッスンを受けたことが、大きな収穫になったという。 「トレーナーは日本語は話せませんが、音として捉えたときにどのようなアプローチが可能かを一緒に探ってくれました。日本語は口の前の方で発声する言語なので、そこで感情を強く表現しようとすると、喉が締まって高音が出にくくなる。だったら、原歌詞の英語の発声を意識しながら、それを日本語の歌詞に移していけば……と。解剖学的理論に裏打ちされた手法は、とても参考になりました」 夏からは、日本のカンパニーが催す「エコール」と呼ばれる2カ月近くの音楽稽古に参加。その後のトリプルキャストによる稽古など、これまでとは異なる環境に身を置きながら、本番を目指し日々を重ねてきた。劇団の一員としてではなく、ひとりの俳優として求められる立ち位置、自身の個性を探りながら。 「総勢80人を超える大きなカンパニーで、本当にさまざまなタイプの俳優がいます。でも、作品を信じて皆が結集すること自体は、どこにいても同じなんだなと。作品や役の解釈はある程度演出家が示してくれますが、僕としては、選んだ道を歩んで理想を成し遂げる意志の強いバルジャンであり、僕の身体をしっかり通して言葉ひとつ、動きひとつに嘘がない、温かく人間みのあるバルジャンになりたいと思っています。そうして、最期の瞬間には、皆に微笑んで迎えてもらえるような……ラストシーンは、稽古している今でさえ、堪えきれないような感情が湧くんですよ」 日本初演は1987年。今回の上演では、英国のウエストエンド公演で取り入れられた要素も加わり、ところどころに新鮮な風が吹くという。その舞台で踏み出す第一歩、そしてその先を、飯田はまっすぐに見つめている。 「初日は、立ってみたら案外いつもと変わらなかった、というくらいのつもりでいかないと潰れてしまいそうなので、あまり意識せずに迎えたいなと。レミゼの先にどんな役との出会いがあるかは、僕としても本当に楽しみなところだし、具体的に何をやりたいかというよりは、今はただ、いい俳優になりたいと思っています。技術をきちんと磨きながら、調子に乗れるときは調子に乗って……いつでも納得のいく芝居ができる、そんな俳優に」 飯田洋輔(YOSUKE IIDA) 1984年福井県生まれ。東京藝術大学音楽学部声楽科在学中の2004年に劇団四季に入団。『ジーザス・クライスト=スーパースター』ジャポネスクバージョンで初舞台ののち、『キャッツ』『オペラ座の怪人』『美女と野獣』『壁抜け男』ほか数多くの作品に出演。2023年末の退団以降はソロライブやディナーショーの開催、朗読劇『ラヴ・レターズ』への出演など活動の幅を広げている ミュージカル『レ・ミゼラブル』 作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク 原作:ヴィクトル・ユゴー 作詞:ハーバート・クレッツマー オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ 演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル 翻訳:酒井洋子 訳詞:岩谷時子 出演:吉原光夫 佐藤隆紀 飯田洋輔(ジャン・バルジャン/トリプルキャスト) 伊礼彼方 小野田龍之介 石井一彰(ジャベール/同上) 昆 夏美 生田絵梨花 木下晴香(ファンテーヌ/同上) 屋比久知奈 清水美依紗 ルミーナ(エポニーヌ/同上) 三浦宏規 山田健登 中桐聖弥(マリウス/同上) 加藤梨里香 敷村珠夕 水江萌々子(コゼット/同上) 駒田 一 斎藤 司 六角精児 染谷洸太(テナルディエ/クアドロキャスト) 森 公美子 樹里咲穂 谷口ゆうな(マダム・テナルディエ/トリプルキャスト) 木内健人 小林 唯 岩橋 大(アンジョルラス/同上)ほか 東京公演 会場:帝国劇場 期間:2024年12月20日(金)~2025年2月7日(金) *プレビュー公演 2024年12月16日(月)~12月19日(木) 大阪公演 会場:梅田芸術劇場 メインホール 期間: 3月2日(日)~3月28日(金) *2025年1月18日(土)一般発売 福岡公演 会場:博多座 期間: 4月6日(日)~4月30日(水) *2025年2月22日(土)一般発売 長野公演 会場:まつもと市民芸術館 期間:5月9日(金)~5月15日(木) *2025年2月28日(金)一般発売 北海道公演 会場:札幌文化芸術劇場 hitaru 期間:5月25日(日)~6月2日(月) *2025年2月5日(水)一般発売(予定) 群馬公演 会場:高崎芸術劇場 期間:6月12日(金)~6月16日(月) *2025年4月5日(土)一般発売 BY MICHIKO OTANI, HAIR&MAKE-UP BY YOKO YODA,STYLED BY KAZUYUKI TAMURA