「ショートスリーパー」は体に悪い? “眠り研究”の第一人者に聞く、睡眠の最前線
※本記事は、2020年12月10日に公開した記事の再掲です 新型コロナウイルスの感染拡大により、不安やストレスで睡眠の質の悪化を感じる人が増えている。 【全画像をみる】「ショートスリーパー」は体に悪い? “眠り研究”の第一人者に聞く、睡眠の最前線 「ウーマンウェルネス研究会」が2020年9月に発表した調査によると、首都圏在住の20~50代男女のうち約6割の人(調査数:882人)が、「眠りが浅い」「夜中に何度も起きる」などと睡眠の質の悪さを訴えていたという。 2018年に報告されたOECDの調査でも、日本人の平均睡眠時間(15歳~64歳)は加盟国中最も短い442分(7時間21分)だった。もともと日本人の睡眠時間が短かった中で、コロナがさらに睡眠の質を悪化させている状況と言える。 睡眠不足は、健康や生産性に直結する重要な問題だ。規則正しい生活をして、十分な睡眠をとることが一番とは分かっていても、それができないからこそ、短い時間でできる限り質の良い睡眠をとりたいと思う人は多いはず。 そもそも、「良い眠り」とはどういった眠りなのだろう。質の良い睡眠をとるためには、どうすれば良いのだろうか。 睡眠研究の第一人者である、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長に、睡眠の良し悪し、そして、最先端の睡眠研究で分かってきた眠気の鍵について、話を伺った。
眠りの良し悪しを左右する「睡眠サイクル」
よく「良い睡眠が取れていると目覚めがすっきりする」などと言われるが、柳沢教授は、 「すっきりと起きられたかどうかはあくまで主観的な感覚なので、それだけで良い睡眠が取れたかどうかを評価するのは難しいです」 と話す。 柳沢教授によると、客観的に睡眠の質の良し悪しを判断する基準のひとつは、「睡眠のサイクル」だという。 私たちが眠っている間、脳はいわゆる「レム睡眠」や「ノンレム睡眠」といった状態を行き来している。レム睡眠中は、眠っている最中であるにもかかわらず、大脳皮質(思考などに関係した脳の部位)の状態は覚醒している時と近い。 「レム」とは「急速眼球運動(Rapid Eye Movement)」の略で、レム睡眠中は睡眠中にもかかわらず眼球が小刻みに動く現象を伴う。また、レム睡眠中の心拍数や血圧は、ノンレム睡眠時よりも高くなり、変動も大きくなる。 人は眠る時には、まずノンレム睡眠状態となり、それが60分前後続く。その後、レム睡眠へと移行し、ふたたびノンレム睡眠状態になる。このノンレム睡眠とレム睡眠のセットがいわゆる「睡眠サイクル」で、おおむね90分程度で1サイクルとなる。 もし正常な睡眠ができているなら、1晩の間に睡眠サイクルは4~6回繰り返される。