ヤカンでつゆを足す福岡「牧のうどん」、新潟みかづきの「イタリアン」…“チェーン店ツーリズム”がアツい理由
この数年、ローカル飲食チェーン店を紹介するバラエティ番組が増えた。特に東京近郊で展開するようなローカルチェーンの店がよく採り上げられ、SNSでは「ここ、学校の帰りによく食べたよ~」などと大きな盛り上がりを見せる。 【写真】この記事の写真を見る(2枚) その盛り上がりは、私のブログ「本店の旅」のアクセス数にも跳ね返ってくる。私は全国にある飲食チェーン店の本店や1号店を巡る活動をしており、現在では47都道府県でおよそ420店舗ものチェーン店を巡り、“チェーン店の旅”として記録してきた。 そんな中、いま注目が集まっているのは、北海道にしか無かったり、東北にしか無いようなチェーン店、いわゆる「ローカルチェーン店」ではないだろうか。
「天下一品」から始まったチェーン店探訪
私がチェーンの魅力に目覚めたのは、京都のラーメン店からだ。学生が多く住む京都市内には、昔からラーメン店が多く、激戦区の様相を呈している。中でもとりわけ個性的で、関西ローカルな味だったのに、今や全国区の人気を得た店といえば「天下一品」だろう。 「やっぱり本店は美味いよな~」 学生時代から天下一品のコッテリが大好きだった私は、何度も京都の総本店にまで足を運んだ。他に類を見ないほど濃厚なスープを味わっては、「本店の味は格別だな」と、同行した仲間と確認しあった。しかし、なぜ本店の味は美味しいのか? という理由は誰も知らず、「本店だけは作り方が違う」「本店だけは何かが混ざってる」といった荒唐無稽な都市伝説で盛り上がるばかりだった。 ある日、本店が美味しい理由について店員さんに尋ねてみたところ、「他店と全く同じですよ。」という回答をされた。 えっ、同じ!? つれない答えに、私は大きな衝撃を受けた。そして仲間内での様々な都市伝説がコッテリスープの底に消えいった。
チェーン店に行くために飛行機に乗るように
「本店だから美味しい」と感じたのは、ひょっとすると味以外の“何かの要素”が精神に作用しているのではないか。それは一体何なのか? 他のチェーン店でも同じ現象が起こるのか? その答えを確かめるべく、私のチェーン店探訪が始まった。15年前のことである。まずは近場の店への探訪から始まり、徐々に遠方の店にも行くようになった。 長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」の創業地は長崎で、1号店は今も長崎で営業中だと知った私は、長崎空港行きの航空券を買い、ホテルも手配した。 「チェーン店に行くために飛行機に乗る日が来てしまった……!」 何時間・何万円もかけてたどり着いた、リンガーハット1号店の長崎宿町店。創業当時の店舗写真や、店名となったイギリス人実業家フレデリック・リンガー氏の肖像が飾られた店内で食べる「長崎ちゃんぽん」は、の1本、キャベツの1枚、スープの1滴までドラマに満ちていた。まさに、チェーン店が旅の目的になった瞬間である。 やがて全国チェーン店の本店や1号店の大半を探訪した私は、徐々に全国のローカルチェーン店の本店や1号店の探訪へとシフトしていった。どこにどんなローカルチェーン店があるのだろうか。「知らない店を知る」ために、Googleマップや食べログを駆使して、まだ見ぬチェーン店を旅の目的地にした。