「ショックとストレスで何度も辞めたいと」 西武柳沢で1984年から続く人気ラーメン店「一八亭」を営むイタリア人男性。店を受け継ぐまでの経緯と、「外国人がラーメンなんか作れるわけがない」を乗り越えた先に見た景色とは?
その後、リーマンショックや東日本大震災などの影響で売り上げが落ち込んでいった。知枝さんからは、 「無理しなくていいよ。お店をやめよう」 と声をかけられた。店の2階に転がり込んだ時に、知枝さんから「ラーメン屋を手伝うのは無理よ」と言われた、その真意に気付いた。 ■新メニューが起死回生の一手に だが、ジャンニさんが諦めることはなかった。 「ここで諦めてはダメだ。まだまだ頑張ろう」 そう自分に声をかけながら、2010年ごろからは新しいメニューにチャレンジしようと、イタリア風の油そばをラインナップした。もともと営業が終わった後にジャンニさんがまかないとして作っていたメニューだったが、
「これ美味しいからメニューにしてみよう。ダメだったらやめればいいから」 という知枝さんの意見からメニュー化された。結果、知枝さんの予想は見事に的中し、油そばは若いお客さんには一番人気になった。 それまでは創業当時からのラーメンを出していたが、ここからジャンニさんのオリジナルのメニュー開発がスタートする。その後、自家製麺をスタートし、パスタ用のセモリナ粉をブレンドして作った極太麺が誕生した。 2012年からは「ジェノヴェーゼ」の提供がスタート。塩ラーメンにバジルペーストを合わせた斬新な一杯で、ここに自慢の極太麺を合わせた。バジルがたっぷり入った緑色のスープだが、ベースの塩スープがしっかりラーメンらしい味わいで、ラーメンとしてきちんと仕上がっているのが特徴だ。
この他、サイドメニューとしてモッツァレラ餃子などもラインナップし、ジャンニさんオリジナルメニューが次々ヒットする。このころから、テレビの取材も入るようになり、客足も一気に伸びていった。 ■現在のラーメン業界の一端を象徴する物語 「一八亭」は昼の11時から朝方4時まで営業している。昼営業はジャンニさん、夜営業は知枝さんで切り盛りしているため、平日はほとんど一緒に過ごすことができない。唯一日曜日は22時半までの営業なので、日曜の夜と定休日の月曜日だけ2人で過ごすことができる。