「ネバーギブアップ」 被団協代表委員の箕牧智之さん、核兵器廃絶の道半ばで逝った坪井直さんの教え胸に ノーベル平和賞授賞式
ノルウェーのオスロ市庁舎で10日にあった日本被団協へのノーベル平和賞授賞式に、代表委員で広島県被団協の理事長も務める箕牧(みまき)智之さん(82)=広島県北広島町=が登壇し、賞状を受け取った。被爆地広島から核兵器も戦争もない世界の実現を訴えてきた多くの先人は受賞も廃絶も見届けることなく亡くなった。「諦めるわけにはいかない」。苦難の道のりを思い、決意を新たにした。 【画像】原爆投下の8月6日とらえた5枚だけの写真 厳かな雰囲気の中、箕牧さんは黒いスーツ姿で車椅子に乗り、時折会釈をしながら会場に入った。ノーベル賞委員会のヨルゲン・フリードネス委員長のあいさつにうなずきながら聞き入った。促され、引き締まった表情で中央に進み、賞状を受け取ると、あふれそうになる涙をこらえた。 被爆者運動に本格的に関わり始めたのは20年ほど前から。受賞発表以降、「私が理事長の時にたまたま」と繰り返した。1956年に広島市基町(現中区)のYMCA講堂であった県被団協結成総会の写真を見て、初代理事長の森滝市郎さん(94年に死去)たちの「私が知らない相当な苦労」に思いをはせた。 町議も務めた持ち前の行動力と熱意で、被爆者運動を引っ張る立場になった。政府に核兵器禁止条約の参加を求める署名集めで街頭に立っても、素通りされてしまう現実を嘆く。「オスロからなら世界に少しは被爆者の思いが届くのでは」と期待して臨んだ授賞式。「ネバーギブアップ」。国内外で行動を共にした前理事長坪井直さん(2021年に死去)の教えを胸に刻み直した。 授賞式には、いずれも日本被団協代表理事の田中聡司さん(80)=広島市西区=や本間恵美子さん(74)=島根県松江市=も参列し、今後の活動への思いを強めた。被爆者で11日に現地で証言する小倉桂子さん(87)=中区、高校生平和大使の基町高2年甲斐なつきさん(17)=西区=も見届けた。
中国新聞社