接待で入手した非公表の設計単価表、積算ソフト会社に売却 鹿児島県幹部「業務への影響生じない」… ライバル社は「不公平」と怒り
鹿児島県土木部の内部資料「公共事業設計単価表」を巡る贈収賄事件で、贈賄容疑で逮捕された会社員の男(64)=いちき串木野市旭町=が県職員から受け取った設計単価表を「積算ソフト販売会社の男性社員に売却した」と供述していることが20日、県警への取材で分かった。 【写真】家宅捜索を終え、押収物を運び出す鹿児島県警捜査員=9日、県庁
男と収賄容疑で逮捕された県南薩地域振興局土木建築課技術補佐の男(59)=鹿児島市東郡元町=は約20年前から単価表の受け渡しがあったとされ、県職員の男が「最初は断っていたが、何度も要求され応じてしまった」と供述していることも判明。会社員の男は2005年まで建設会社を経営しており、県警は当初は工事費積算の資料として自身が単価表を使用、逮捕容疑となったこの1~2年は男性社員に売ったとみている。 さらに男性社員を通じ、県外に本社がある積算ソフト会社に単価表が流出した可能性があるとみて、会社員の男と男性社員が贈賄の共謀関係に当たるか調べている。県警によると、男性社員は「単価表をもらう前は非公表のデータがなく、積算の精度が悪かった」と話している。 単価表は資材単価などを掲載しており、工事費を割り出す基となる。県ホームページで公表されるが、一般刊行物から転記される部分は非公表。入札時に建設会社は刊行物を基に積算会社が抽出したソフトを活用するのが一般的とされる。
県職員の男は20年3月から21年11月までの間、単価表を複数回提供した謝礼として、6回にわたり計約10万円の飲食接待を受けた疑いで、会社員の男は提供を受けた見返りに接待をした疑いでそれぞれ逮捕された。 ■「あるとないでは、精度に差が出る」 鹿児島県土木部の内部資料「公共事業設計単価表」が積算ソフト会社に流出した疑いが浮上した贈収賄事件。県内の積算ソフト会社は「一部に非公表の情報が流れると不公平。(事実なら)各社の努力が割に合わなくなる」と憤った。 設計単価表は公共事業の事業費を積算する基になる資料。県が市場価格などの実態調査した部分は公表されているが、一般刊行物からの転記は著作権への配慮などから非公表で、県は「取扱注意」としている。 収賄容疑で県職員が逮捕された9日の緊急会見で、県幹部は単価表授受の影響について「情報の取り扱いは不適切だったが、業務への影響が直ちに生じるものではない」と繰り返した。
鹿児島市の建設会社によると、入札では積算会社が割り出した積算ソフトを活用するのが一般的。土木業者が単価表を入手するうまみは少ないという。 一方、積算ソフトを手掛ける県内の会社は「鹿児島の入札の競争は激しく、一円単位の精度が求められる」と明かす。別の積算会社は「単価変動がある度に刊行物を購入し、千ページ以上から必要な数字を拾い上げなければならない」と話し、「非公表版の単価表があるのとないのでは、手間や精度に差が出る。影響がないはずがない」と県の認識に不満を口にした。
南日本新聞 | 鹿児島