半分以上が「のぞき見」だった情報漏洩 東京五輪も標的、高まるサイバー攻撃の脅威
――東京五輪・パラリンピックも狙われますか?
五輪・パラリンピックのように世界が注目する大規模イベントは、攻撃の格好の対象です。2016年のリオ大会では、開催組織や関連企業が狙われました。18年の平昌冬季大会では開会式当日に組織委員会のネットワークなどが攻撃を受け、一時使用不能になりました。政治目的の妨害活動も懸念されます。 東京大会に向けては内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が中心となって、関連機関の調整組織を設けています。数千人が参加する演習なども重ねています。
――私たちにできる対策を教えてください。
個人のパソコンやスマートフォンも攻撃対象です。信頼されている企業などになりすまし、偽サイトに誘導する「フィッシング詐欺」が典型例です。最近はスマホ決済の不正利用も相次ぎました。 リモート勤務で自宅などから社内システムにアクセスする際に、職場指定の方法を守るのは当然ですが、メールの添付ファイルも要注意です。第三者によるのぞき見にも気をつけましょう。のぞき見は「ビジュアルハッキング」と呼ばれる単純な手口ですが、情報漏洩の半分以上を占めるとされます。周囲に細心の注意を払うことが重要です。
■ちょっとウンチク 守るも攻めるもAIカギ
サイバーセキュリティー業界では、人工知能(AI)の力を借りてサイバー攻撃に対抗しようという機運が高まっている。通常のウイルス対策ソフトでは検知が難しい未知のマルウエアを見つけたり、侵入後のシステム内での怪しい動きを検知したりといったやり方だ。こうしたセキュリティー製品も出始めている。 一方で「AIへのサイバー攻撃」の懸念も強まっている。自動運転システムなどに組み込まれた画像認識システムに誤作動が誘発されるといったリスクが指摘されている。守るも攻めるも、今後のサイバー攻撃はAIがカギを握りそうだ。 (編集委員 吉川和輝) [日本経済新聞夕刊 2021年1月4日付]