スーツに見える作業着は、なぜ3倍ペースで売れているのか
11月某日、記者はとある会社の社長を取材したところ、その人はスーツのような作業着をまとっていたのである。「スーツのような作業着? なんだそれ?」と感じた人もいると思うので、簡単にご説明しよう。 【画像】八重洲地下街に構えた、リアル店舗を見る 商品名は「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」。水道工事などを手掛けるオアシスライフスタイルグループの「オアシススタイルウェア」(東京都港区)が2018年3月に発売したところ、売れに売れているのだ。 発売1カ月で、当初目標の5倍を売り上げる。SNS上で「スーツに見せる必要があるのか」「絶妙にダサい」といった批判の声も多かったが、勢いは衰えず。1年目の売り上げは1億円、2年目は3億円。「ま、まさか、3年目の今年も3倍の9億円じゃないよね?」と気になって、担当者に聞いたところ「いえいえ、10億円を見込んでいるんですよ」とのこと。 これまでECサイトを中心に販売してきたが、今年9月、東京の八重洲地下街で初めてリアル店舗を構えた。新型コロナの感染拡大を受けて、多くのアパレルが苦戦している。「このご時世なので、さすがに厳しいでしょ」と思っていたら、想定の2倍ほど売れているという。 さて、ここまで書いていて、気になったことが一つ。「アパレルでない会社が変わった服をつくって売れた!」となれば、同じような商品が出てくるのではないか。ちょっと調べたところ、紳士服や作業着のメーカーなどから、よく似た商品が登場しているのだ。にもかかわらず、なぜワークウェアスーツは売れているのか。オアシスライフスタイルグループの関谷有三CEOに、その秘密を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
5月の売り上げ、対前年同月比で11倍
土肥: 「スーツが売れない」状況が続いていますよね。ビジネスシーンでカジュアル化が進んでいることもあって、パリっとした背広を着る人が減っている。その傾向に拍車をかけるように、新型コロナの感染拡大を受けて、在宅勤務をする人が増えてきました。外出する機会がめっきり減ってしまったので、スーツを着る回数が減った人も多いのですよね。 紳士服大手4社の業績をみると、それはそれは大変で軒並み赤字。店舗数を削減したり、従業員の数を減らしたり、あの手この手でなんとかこの難局を乗り越えようとしているわけですが、オアシススタイルウェアの「ワークウェアスーツ」は違いますよね。2018年3月に販売して、その後は3倍ペースで売れている。コロナ禍なので、他の紳士服メーカーと同じように「苦戦しているのかなあ」と思っていたら、5月の数字を見てびっくりしました。対前年同月比で11倍。一体、どうなっているのでしょうか? 関谷: 新型コロナの感染が広がるにつれて、僕たちも「これからどうなるのか?」よく分かりませんでした。ただ、3月ごろからジワジワ売れていって、緊急事態宣言が発令された4月になると欠品が続くことに。こうした事態を受けて、「もしかして、アパレルの世界に新しい時代がやって来るかもしれない」と思いました。どういうことか? コロナ前であれば、春夏秋冬の各シーズンに服を購入する人が多かったですよね。メーカー側もシーズンに合わせてトレンドを仕掛けていたわけですが、感染拡大によって状況が大きく変わりました。外出を控えて、家で仕事をする人が増える。結果、どうなったのか。機能性が高く、着心地のいい服を求める傾向が強くなってきたのではないでしょうか。 土肥: ワークウェアスーツはこれまでモデルチェンジをしていないですよね。意図的に「流行」とか「トレンド」に無縁だったわけですが、それが結果的に世の中の流れに合致したわけですかね。ただ、「スーツのような作業着が売れた!」となれば、「ライバルのアパレルメーカーに勝つぞー! そのために、さまざまなアイテムを出すぞー!」といったことを考えているのではないでしょうか?