日雇い派遣、禁止後1年で「解禁」議論なぜ?
10月4日、政府の規制改革会議は「日雇い派遣」を解禁するよう求める意見書をまとめました。しかし、日雇い派遣といえば昨年禁止されたばかりです。なぜ、あらためて解禁が議論されているのでしょうか。 日雇い派遣は、労働者と派遣元の契約が30日以内である短期の派遣のこと。仕事があるときだけ派遣会社と雇用契約を結ぶ「登録型」の派遣です。派遣元に常時雇用され、仕事の有無にかかわらず給料が支払われる「常用型」の派遣に比べると、不安定な雇用形態とされています。 2008年、リーマンショック後の不況により、「派遣切り」「年越し派遣村」などが社会問題化しました。このとき「雇用を不安定にしている」として批判されたのが日雇い派遣でした。その後の「ワーキングプア(働く貧困層)」の増加もあり、労働者保護の観点から、2012年10月の労働者派遣法改正で原則禁止となりました。 ただし、すべての日雇い派遣が禁止されたわけではありません。ソフトウェア開発や機械設計など、例外的に日雇い派遣が認められる業務もありました。また、60歳以上であること、雇用保険の適用を受けない学生なども、原則禁止の例外として扱われました。
「働き方の選択肢」増やす
解禁へ向けての議論が始まった背景には、規制緩和を通じて経済成長を進めようとする「アベノミクス」があります。つまり「働き方の選択肢」を増やせば、それだけ新たな就業機会も生まれるとの考えです。 政府の規制改革会議の意見書は、「限られた期間・時間だけ働きたい労働者がおり、短期間に労働者への需要が集中する業務もある」「日雇い派遣を規制することは、むしろ就労マッチングや派遣元による雇用管理の有効性を損ない、他の形態(直接雇用等)の日雇いを増加させているにすぎない」「例外規定を含めた抜本的な見直しが必要」などと指摘しました。 これを受け、厚生労働省の労働政策審議会は年内に議論をまとめ、来年の通常国会に改正労働者派遣法の再改正案を提出することを目指します。 規制改革会議の議長である岡素之住友商事相談役は、4日の会見で「労使が納得したうえで多様な働き方を選択できる社会を構築すべきだ」との意見を述べ、マスコミや国民が傍聴できる公開ディスカッションを年内に開きたい意向を示しました。 日雇い派遣解禁は、働き方の選択肢が増える一方で、再び雇用の不安定化を助長しかねないとの懸念もあり、波紋を呼びそうです。