雄のニホンジカの生態把握へ 遺伝マーカーを開発 福島大研究グループ 福島県
福島大共生システム理工学類(福島県福島市)の兼子伸吾准教授(43)と同大共生システム理工学研究科博士後期課程2年の高木俊人さん(26)らの研究グループは、ニホンジカの雄の系統や分布の把握に有効な遺伝マーカーを開発したと26日、発表した。近年、ニホンジカの農林業への被害や鉄道との衝突など社会的被害が増加している。兼子准教授は「生態の分析は適切な管理方針を決める有力な情報になる」と見ている。 従来は母親のみから子に伝わるミトコンドリアDNAが研究対象だった。そのため出生地付近に定着するケースが多い雌については知見が蓄積されていたが、広範囲に移動する雄については不明な点が多かった。 グループは雄のみが持つY染色体に着目した。Y染色体の遺伝マーカーを開発し、全国8地点から採取した雄のニホンジカを調査した。広範囲を移動する雄も地域によって系統が変わり、ミトコンドリアDNAの系統分類とも異なることが明らかになった。
兼子准教授は「今後も解析を重ね、地域の課題解決に生かしていく」と語った。研究は生態学会の国際誌「Population Ecology」に掲載された。