《タワマンvs.地元住民》「神様のいる土地を汚さないで」…松江市のタワマン計画に温厚な住民が「ブチギレ」
出せば完売、売れば高額。タワマンブームが終わらない。庶民は手が出せない代物なのに、いったい誰が買っているのか。バブルは弾けるのか。タワマンのいまと未来、天国と地獄を覗いてみるーー。 【マンガ】「憧れのタワマン生活」が一転…!残酷すぎる「格差の現実」 前編記事『【衝撃】「景色すべてが機械式駐車場」「もうこれで決定です」…江東区のタワマン建設に対する「地元住人の怒り」』より続く。
松江城近くに高層住宅計画
巨大マンションの建設に反対する住民は、東京から遠く離れた島根県松江市にもいる。日本神話の舞台にもなった霊験あらたかなこの地も、不動産マネーゲームのフィールドと化しているという。 〈松江城近くに高層住宅計画 大阪の会社、19階建て60メートル〉 2023年9月16日、地元紙「山陰中央新報」に掲載された見出しは地元住民に衝撃を与えた。国宝・松江城近くにある殿町で、京阪電鉄不動産が19階建ての分譲マンション「MATSUE THE TOWER」建設を計画しているという内容だ。 10月下旬に、実際に本誌記者が現場を訪れてみると、近辺には高い建物はほぼ見当たらない。計画地の目の前には、島根県庁庭園という市民にとっての憩いの場があり、多くの人がくつろいでいる。そして眼下には松江城のお堀がめぐらされていて、多くの観光客たちが小舟に乗り遊覧していた。 高層ビルが立ち並ぶ東京都心に新たなビルが建つのとは状況が違い過ぎる。しかも、松江市内に19階建ての高層マンションができるのは歴史上初めてだという。 この報道を受けて、すぐさま一部の松江市民は反対運動を起こしている。住民団体「まつえ/風景会議」世話人で一級建築士の寺本和雄さんは、こう語る。 「計画地は松江城から約100メートル以内に位置し、きわめて歴史的な環境にあります。ここに天守と同じ高さのタワマンを建設するなんて、城下町の価値を大きく損うでしょう。巨大なマンションが美しい景観の障害となることは間違いありません。わたしたちは、今年1月28日に地元紙の一面に〈松江の景観がこんなことになってしまう前に あなたの声を。松江城前、天守と同じ高さの19階建てマンションの見直しを求めます〉と記した意見広告を掲載しました。 その反響は大きく、松江市内、島根県内だけではなく、日本全国、世界中から19階建ての高層マンション反対の署名が集まり、現在1万7000筆を超えています。国際観光文化都市にも指定されている松江市は、かねてから松江城の世界遺産登録を目指すなど、周辺の整備には細心の注意を行っていました。この高層マンションによって長年の苦労が泡になりかねない。観光業にも大打撃を与える最悪の計画だと思います」