「あなた、パパの子どもを産んでくれない?」…母親に頼まれ、17歳の時に「実の父親」の子供を出産した女性が訴える「絶望の日々」
旧家の家柄
麻耶さんは出産後に家を出て以来、両親とはほぼ没交渉だという。彼女が数奇な運命をたどることになった経緯は、彼女の出自にあった。 「私は西日本にある、いわゆる旧家(きゅうか)と呼ばれる家に生まれました。『家は男子が継ぐもの』という古い考えが当たり前の家でしたので、母は妊娠中に(私が)女児だということがわかっても、言い出せずに黙っていたそうです」 そして麻耶さんが生まれた時、麻耶さんの母親は病院に駆け付けた夫や義両親に対し、出産後間もない身体で『女の子でした。申し訳ありません』と土下座して詫びたという。 「そんな母に、祖父母は『次は男にしてちょうだいね』と言っただけで、母の身体を労わるような言葉はなかったそうです。そういう家なんですよ」 第二子=男児出産というプレッシャーがかかる中、麻耶さんの母親は「二人目不妊」に苦しみ、念願の第二子かつ待望の男児が誕生したのは、麻耶さんが13歳の時だったという。 「それまで『女ひとりしか産めない役立たず』呼ばわりされ、何かとつらく当たられていた母がやっと嫁として認められた瞬間でした。ゲンキンなもので、祖父母は手のひらを返したように『これで我が家は安泰だ!』などと喜び、家の中に急に光が差し込んだようになったのを覚えています」
弟の突然死
だが、そんな幸福な日々は長く続かなかった。 「弟が2歳の時に病気で亡くなってしまったんです。半狂乱になった祖父母から『アンタのせいだ!』と理不尽に責められた母は、謝罪の言葉とともに『また産みますから』と繰り返していました」 そうして麻耶さんの母親は、息子の死を悼む間もなく妊活に励んだものの、妊娠できず、それどころか子宮ガンになって子宮を摘出することになってしまったという。 「祖父母に母を心配する素振りはなく『子どもが産めなくなった嫁に用はない』と暗に母に離婚をせまっていました。父もまた実の息子が亡くなったというのに喪に服することもせず、窮地に追い込まれた母を顧みることもなく浮気を繰り返していました。そういう人たちなんです」 針のむしろのような生活の中で麻耶さんの母親は徐々に精神が蝕まれ、自室に引きこもるようになったそうだが、麻耶さんが高校1年の終わりごろ、突然麻耶さんの部屋にやって来ると麻耶さんに向かって信じられない言葉を言い放った。 「あなた、パパの子どもを産んでくれない?」 つづく後編記事「「早く終わってほしい」17歳の時、暗闇のなかで「実の父親」から受けた“おぞましい行為”と、すべてを知る母親から届いた「許しがたいLINE」」では、男系男子に執着した祖父母や両親の異常ともいえる行動と、被害の詳細をリポートする。
清水 芽々(ノンフィクションライター)