「◇◇商事 ブラック」「◆◆ラーメン まずい」 検索エンジンに“サジェスト”される「悪意なき誹謗中傷」の深刻被害
「サジェスト汚染」責任の所在は?
ネット上での風評被害といえば、SNSなどによる能動的な誹謗中傷の印象が強い。一方「サジェスト汚染」は、否定的なワードであっても運営側が意図的に出しているわけではなく、あくまで検索エンジンの“補助的ツール”だ。責任の所在はどこにあるのか。 「確かに検索エンジン側が意図的にサジェスト汚染を発生させているわけではありません。しかし、その機能によって生じる弊害は、技術的なアルゴリズムの調整が不十分であることが原因の一つです。 われわれは運営企業に対し、継続的に改善要望を行っています」(石井氏) 同協会が「テクノロジー集団」である背景には、検索エンジン運営企業へ技術的な側面から改善を要望するという目的もある。
アルゴリズムによって生まれる“悪循環”
サジェスト汚染の対策が必要な理由について、石井氏が補足する。 「サジェストに否定的なワードが表示されると、閲覧者がその内容に興味を持ち、検索結果ページを確認することが多くなります。その結果、関心が高まってさらなるサジェスト汚染が進行し、被害が拡散するという悪循環に陥ります」 検索エンジンのアルゴリズムは、多く閲覧されればそれだけ多くの人が興味を持っていそうだと判断する。実際には興味がない人が閲覧した場合も区別せず、同列に扱われる。その結果、ネガティブなワードによるサジェストが広がる悪循環、つまりネット上の汚染が拡大するというのだ。
風評被害の実例と対策
実害としては、冒頭で触れたような企業の採用活動などが代表的な事例として挙げられるという。 「企業の採用活動では、特定企業に対するサジェスト汚染が広がることで、応募者の減少や離職率の増加が問題となることがあります。 また、飲食店においては、悪質な口コミがサジェストに表示されれば、来客数の減少が顕著となります」(石井氏) まさに風評被害。実際に虚偽情報によるサジェストで客離れなどが発生し、名誉毀損(きそん)の訴訟に発展したケースもあるという。 こうした対策が進んでいるアメリカやヨーロッパでも、検索エンジンに対する訴訟がいくつか提起され、判決によりサジェスト機能の改善が図られた事例もある。特に、欧州連合(EU)では「忘れられる権利」に基づき、特定情報の削除が認められるケースが多く見られるそうだ。