「グラディエーター2」出演のデンゼル・ワシントン「どうやって世の中に恩返しするか意識」
今年で70歳を迎える米国の名優デンゼル・ワシントンが、公開中の「グラディエーター2 英雄を呼ぶ声」で物語の鍵を握る奴隷商人を演じている。東京国際映画祭でのアジア初披露に合わせて来日したワシントンは、役作りの裏側に加え、今後の人生設計まで明かしてくれた。(松田拓也)
舞台は、前作「グラディエーター」(2000年)で、ラッセル・クロウが演じた主人公が亡くなってから十数年後。奴隷商人のマクリヌス(ワシントン)は、ローマ帝国軍のアフリカ侵攻で捕虜となったルシアス(ポール・メスカル)を買う。彼をローマで剣闘士として活躍させて、それにより自らも成り上がろうとする――。前作に続き、巨匠リドリー・スコット監督がメガホンをとった。
「マクリヌスの骨子は全て脚本にある。自分なりの解釈で彼が歩んできた歴史、なぜそういう人になったのかを考え、準備をしました。そして、リドリーの作ったローマに飛んでいったんです」
撮影は主にモロッコやマルタで行われた。円形闘技場などを再現した壮大なセットの数々を目の当たりにし、「巨大都市を全て自分のものにしたい。俺の邪魔をする者をどう利用するか」。自然にそんなことを考えるほど、すっかり役に入り込んだ上で撮影に入っていったという。
主演のメスカルについては、「ポールと、双子の皇帝役のジョセフ(・クイン)とフレッド(・ヘッキンジャー)。この3人の若手は、舞台で訓練を積んだ素晴らしい役者たち。自分の子どもよりも年下で、僕もすっかり年長者になってしまったけれど、彼らの未来は明るいよ」。そう目を細めた。
息子のマルコムが監督したネットフリックス映画「ピアノ・レッスン」(22日に配信開始)では、プロデューサーを務めた。自身の監督業は「心得はあるつもりでしたが、息子の方が本物だと思いました。息子から学んだものを次に生かしたい。5年後以降になると思うけれどね」。
俳優業に話が移ると、出演に向けて話し合いが進行中という「ブラックパンサー」の新作など、待機作について言及。「どれもチャレンジングな役柄。役者として『挑戦状を突きつけられた』と思えることをやっていきたい」と力を込めた。
さらに「母は97歳まで生きた」と切り出し、「僕はそこまで長生きできるか分からないけれど、90歳まで生きるとしたら、人生は3等分出来る」と持論を述べる。「最初の30年は学び、次はそれを生かして稼ぐ期間で、60歳から90歳で大事になるのは『リターン』。表舞台に立つというより、どうやって世の中に恩返ししていくかを意識するようになったんだ」。今後の活動から、そんな思いを感じ取っていくのが楽しみだ。