標高4,600mで始まるキャンプ生活、登山道のない山 【日本山岳会ヒマラヤキャンプ登山隊2023撮影記】#6
食は生活の基盤
ベースキャンプでの食事はダワさんとニマがすべて担ってくれていた。ベースキャンプに上がった日に出てきたのはなんと、わかめのお味噌汁。約2週間ぶりの日本の味はまさに身体に染み渡るという感じだ。いちばん日本食に飢えているこのタイミングで味噌汁を出してくるところは、さすが日本隊のことをよく知っているダワさんだ。 しかしダワさんのすごいところはそれだけではなかった。そこから、毎日違うご飯が出てくる。牛丼(ヤク肉)や巻き寿司、天ぷらが当たり前のように出てくるし、洋食もお手のもの。パスタやピザまで出てくる。毎日美味しいご飯が出てくるため、私たちは少々食べすぎてしまい、むくんでいるのか太ってきたのかわからなくなってしまった。 帰国して体重が増えていたことを考えると後者であることは間違いない。それだけ、ダワさんのご飯は美味しかったのだ。見知らぬ土地で食事が喉を通らないことほどしんどいことはない。そういった意味では、ダワさんのおかげで山としっかりと向き合える体づくりができたのではないかと思う。
アタックに向けての準備
そんな快適なベースキャンプ生活に入りながらも、登山の準備は着々と進めていく。10月14日にベースキャンプを設営してからはレストを挟み高所順応を進めた。4、600mの標高では普通の動きも意識してゆっくり動かないと少し息切れを感じる。とくにかがんで立ち上がるときはそれを感じやすい。じっくりと体が慣れてくるのを待った。 16日になるとグンサで別れていた金子君と合流となった。体調は万全ではなかったもののグンサでぐったりしたときに比べるとかなり顔色も良くなっていた。この日、先行していた3人は標高5、200m地点まで偵察を進めた。日本ではあまり偵察ということはしないが、登山道も道標もない場所を私たちは進まなければならないため、偵察は必須になる。行なっていることはちょっとしたトレッキングではあるが、不安定なガレ場を通過したり、落石、滑落の危険がある場所の近くを通ったりすることもある。すべてを自分たちの目で見て判断して進まなければならない。なによりそのなかでも気にしなければいけないのは、帰れるのかどうかだ。この場所が夜間や霧のなかでも戻れるのか、それをしっかりイメージしながら進む。広く単調な地形では日本から持参したマーキング用のテープや竹の竿を使って目印を置いた。手間のかかることではあったが、自分たちの道を作ることも未踏峰登山の醍醐味だと感じられた。