静岡リニア批判、隣県・市町と比べ際立つ過激度 「ゴールポスト」動かしてJR東海を封じ込め
超電導リニアの走行試験は山梨県内にある実験線だけで行われているわけではない。これまで東海道新幹線の数々の車両を開発してきた愛知県小牧市内にあるJR東海の研究施設でも、リニア車両の走行試験を行っている。JR東海は約66億円かけ、車両を実際に走行させなくても試験ができる装置を昨年3月、小牧研究施設内に建設した。 【写真】車両の開発は着々と進んでいる。2020年には「L0系」の改良型試験車が登場し、山梨の実験線で試験走行している 実際のリニアと同じように磁力によって浮上し、車両走行を模擬した状態で実車体の振動を再現する。これによって、山梨実験線走行の乗り心地をより効率的に確認できる。さらに山梨実験線では難しい地震や機器故障といった異常状態を人工的に作り出し、その対処法を構築することもできる。JR東海リニア開発本部の寺井元昭本部長は、「東海道新幹線の乗り心地に近づけたい」と意気込む。
今後は乗り心地の改良だけでなく、超電導磁石の耐久性の検証や、走行中の異常やその予兆を検知する状態監視システムの試験を行っていきたいという。 ■開発は順調に進んでいるが… 順調に開発が進むリニア車両と裏腹に、膠着状態が続くのがリニアの静岡工区だ。トンネル工事で発生する湧水が大井川中下流域の利水者や南アルプスの生物多様性への影響を与えかねないとして、静岡県が工事を認めていない。この状況を打開すべく、昨年4月から国土交通省の有識者会議が水資源問題を議論しており、今後は生物多様性についても議論する予定だ。
2月7日に第8回の会議が開催され、JR東海は県境付近でトンネルを掘る約10カ月間に山梨県側に流れる水の量について、JR東海と静岡市の2つのモデル計算した結果を示した。JR東海モデルでは約300万トン、静岡市モデルでは約500万トンという試算だ。 大井川の水が県外に流出すると中下流域の利水者が不利益を被りかねないという理由から、静岡県の川勝平太知事は「1滴も譲らない」と反対する。しかし、JR東海は、県内のほかの工事区間から導水路トンネルを使って大井川に戻す水の量が山梨県側に流れ出る量を上回るため、中下流域の河川流量は維持されると説明した。