年2500件超の「KAIZEN」を実行 元フラメンコダンサーの物流包装会社4代目が挑む事業再構築
フラメンコの経験が「共創」に
社長就任時、高木さんが決めた経営テーマは「共創」です。そのために掲げたのが、次の3項目でした。 ・本音で話そう ・規律と自律 ・顧客価値 高木さんは、ある社員から「会長はリーダーシップを持って率いるリーダー像ですが、社長(高木さん)の場合は社員とフラットにパートナーとして仕事している感じがします」と言われたことがあります。 社員とフラットな目線で話す姿勢は、フラメンコで得た経験の影響が大きいといいます。 「フラメンコは、ギタリストや歌い手と一緒に舞台を作りあげていきます。ベテランも新人も、舞台の上では対等なパートナーなんです。バシッとかみ合えば楽しく、クリエーティブな空間になり、お客さんも巻き込んでいける。まさに『共創』のイメージです」
工場をショールーム化
高木さんは就任と同時に、第3次中期経営計画をスタート。その核となったのがKAIZENを軸にした事業再構築です。 具体的には、工場をショールーム化して顧客が見学できる空間にしました。そのため、工場内に散らかる工具を1カ所に収納することから始め、それに関連したアイデアに、社長賞を贈りました。 社外からの工場見学希望が増えたことで、TSKのKAIZENを社外へと広める機運が高まりました。 「工場見学に来たお客様には、社員が自分で考えたKAIZENを紹介するようにしました。お客様の悩みを解決する提案を強みとする、『KAIZENカンパニー』を目指したのです」 高木さんは2023年、新サービスとして「KAIZEN BANSOパック」を立ち上げました。顧客の物流現場が抱える課題の整理、物流コストの見える化、改善手法の提案などを行うサービスです。 具体例としては、自動車部品メーカーの工場における工具置き場の省スペース化の実現、作業効率をアップするための台車の導入などが挙げられます。 そのために取り入れたのがデザイン思考です。「共感」「定義」「概念化」「試作」「テスト」という五つのプロセスで課題解決に導くデザイン思考は、TSKが目指す方向性に通じるといいます。 現在、KAIZENのコンサルティング事業を一般社団法人として独立させ、新たなステージに入りました。 工場見学に来る顧客のニーズは人材育成が中心といいます。工場で働く従業員が自発的に改善に向けた行動を取るようにするため、TSKが人材育成のワークショップを共同企画する試みも始めています。 「工場を見学して終わりではなく、どんなKAIZENを持ち帰っていただけるかが大切です。今後はワークショップなどの付加価値を事業化したいと考えています」