本当の意味で最後のオリンピック予選大会「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スケートボード・パーク種目の見どころ
パリオリンピック出場権を決定づける、本当の意味で最後となる「オリンピック予選シリーズ(以下:OQS)」の二戦目であるブダペスト大会が、ハンガリー・ブダペストにて2024年6月20日(木)~6月23日(日)の4日間にわたり開催される。 先月、フェーズ2の1戦目として中国の上海で開催されたOQS上海大会を終えて、いよいよオリンピック予選も大詰めとなる中、今回のブダペスト大会の結果が最終的にフェーズ1のポイントと上海大会を加算されてついにパリオリンピック代表選手が決まる。 またフェーズ2に該当する今大会は前回の上海大会同様に、フェーズ1終了時の世界ランキングポイントに基づいて選出された男女各44名の選手に出場可能となる。なお本シリーズは2戦でオリンピック予選大会の全体のポイント配当の7割近くを占める中、既に上海大会では各選手がそのプレッシャーから苦戦する様子も見られ波乱の展開となった。 そして前回大会の結果によりランキングも大きく入れ替わり、非常に興味深いオリンピック出場権争いが繰り広げられている。一方で今大会の結果次第に現在出場権圏外の選手たちも大いに逆転できるチャンスが残されている。 本記事では男女の現在の世界ランキング(2024年6月11日現在)を元に、今大会の見どころを解説する。
女子パーク
改めて説明するが、パリオリンピックには男女共に世界ランキング上位20位、各国からは上位3名までが最大で出場権を獲得できる。そのため20位以内に同国から3名以上いる場合は、繰り下げで20名になるように出場権が割り与えられる。 現在の勢力図はフェーズ1と前回の上海大会を終えた時点で、トップ20位以内に3名以上がランクインしている国は変わらず日本、アメリカ、ブラジルの3カ国。その中で選手が一番多いのはアメリカで合計5名、そこに続きブラジルと日本が4名という状況だ。そのため引き続き今回でも気になるのは、既に3名以上がランクインしている日本、アメリカ、ブラジルの国内での出場枠争いだろう。 まず日本人選手の争いだが、上海大会で2位入賞を果たした開心那が世界ランキング1位を保持して2位と8万ポイント近い差を付けている中、怪我から復調した様子を同大会にて3位入賞で示した東京五輪金メダリストの四十住さくらが世界ランキング3位へジャンプアップ。続いて4位には同大会で決勝進出を逃して9位となった草木ひなのがランクイン、そして同大会で見事なパフォーマンスで5位となり世界ランキングを17位から9位まで順位を引き上げたのが長谷川瑞穂。トップ3に迫る彼女に今大会も注目だ。 そして下馬評としては現在トップ10にランクインしている彼女たちの中で出場権が争われている可能性が高いという声もあるが、このOQSは1試合で最大21万ポイントが獲得できる前代未聞の高得点配当の予選大会。アジア選手権で健闘した世界ランキング22位の菅原芽依、世界ランキング25位で日本人スケーターの先駆者でもあるベテランの中村貴咲が大逆転を目指して大健闘する姿にも期待したい。 上海大会の結果によりさらに熾烈な代表枠争いになっているのがアメリカ。現在トップ20には5名の選手がランクインをしている。同大会で決勝進出を逃したミナ・ステスを世界ランキング6位から12位へ順位を落とす一方で、同大会を7位で終えたブライス・ウェットスタインが5位にジャンプアップ。続いて14位にはルビー・リリー、15位にグレイス・マーホーファー、17位にジョーディン・バラットとなり、惜しくも20位以下にランクダウンしたリリアン・エリックソンが24位にいる状況だ。 現在国内別トップのウェットスタインは12位のステスに対して3万8000ポイント近くの差をつけているが、今大会への影響はあまり無いと思われる。それよりも14位のリリー、15位のマーホーファー、17位のバラットの3名による出場枠争いの方が注目だろう。ただ現在の得点差では今回の結果次第で順位がガラッと入れ替わる事は十分考えられる。ついに今大会で決まるパリオリンピック代表枠は果たして誰が獲得するのだろうか。 そしてアメリカ以上に代表枠争いが拮抗しているのがブラジル。ライカ・ベンチュラが上海大会で決勝進出を逃したことで世界ランキング7位に停滞する中、彼女に続くイサドラ・パチェコが同大会4位で世界ランキング8位、そしてドーラ・ヴァレーラが同大会6位で世界ランキング10位と大きくジャンプアップした。そして少し遅れをとっているインディアラ・アスプが18位にいる状態であるが、大逆転が起きうるのが本シリーズ。果たしてこのトップ3をアスプが引きずり下ろすことができるのか? さらに今大会で個人的に注目したいのは現在世界ランキング11位のスカイ・ブラウン(イギリス)、13位のナイア・ラソ(スペイン)、そして2位のアリサ・テルー(オーストラリア)の3名。 出場大会では確実に優勝を勝ち取るブラウンは、膝関節の内側側副靭帯の損傷という怪我の影響もあり、今年はまだスケートボードの国際大会に姿を見せていない。しかしパリオリンピックへの出場を確かなものにするには今回出場し結果を残す必要があると思われるがどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。 さらにもう一人忘れてはいけないのはスペインのラソ。フェーズ2を迎えた時点で世界ランキング4位だった彼女は惜しくも上海大会の直前練習中に転倒し、鎖骨を骨折したことから大会へ出場はしたものの予選1本目でプールセクション外を軽く流すだけで終える形となってしまった。どこまで回復しているかにまだ不安が残るが今大会での結果が必要なのはブラウンと同様だ。 そして一方で前回の上海大会で素晴らしい成績を残したのはテルー。各選手がフェーズ2独特のプレッシャーから苦戦を強いられる中、自分のパフォーマンスを出し切って優勝できる彼女の強さを感じた。その一方で、今大会では前回決められなかった「スイッチ540」に再度トライしてくることだろう。パリオリンピックに向けて絶好調で調整している彼女にも注目だ。