農機事故ゼロへ意識浸透 冊子、標語募集…地道に啓発 北海道・JAきたみらい
北海道のJAきたみらいが、農作業事故を減らす対策強化に乗り出している。昨年、管内で2人の死亡事故が発生。これを受け、JAは事故防止を重点事項と位置付け、2019年8月から21年1月まで、農作業事故「ゼロ」運動に取り組む。冊子やファクスで啓発する他、標語コンクールも実施。農作業安全の意識が組合員に浸透してきた。(洲見菜種)
JAきたみらいの管内は毎年、約80件の農作業事故が発生。秋の収穫期は、日没が早く天候も変わりやすいため作業を急ぎがちになり、事故が起きやすいという。全国的にも9、10月は「秋の農作業安全確認運動」の重点期間だ。 農作業事故「ゼロ」へ向けてJAは昨年8月、冊子「農作業を安全に行うために」を、組合員全戸に配布。労働安全管理が項目に含まれる農業生産工程管理(GAP)の実践などを呼び掛けた。 その後も組合員宅へのファクス送信を増やし、地区や月ごとの事故件数を知らせたり熱中症対策を周知したりしてきた。注意喚起や意識の向上をテーマに標語コンクールも実施。最優秀賞はポスター、優秀賞はシールにして配っている。 対策を通じ、組合員は事故防止の意識を高めている。多くの人が事故に至らないまでも“ヒヤリ・ハット”した経験はあり、管内の仲間が事故に遭うたびに悲しい思いをしてきた。 「安全に 作業してこそ きたみらい 安全に 作業するから 我がみらい」 標語コンクールで最優秀賞を受賞した小山田英樹さん(47)は、タマネギを13ヘクタールで生産する。組合員として農作業安全に取り組む姿勢を、標語に込めた。自身も事故の経験があるという。 収穫物を集荷場に運ぼうと急ぐ中、夕陽がまぶしく前方を走る作業車に気付かず接触した。小山田さんは「最近は農機が高性能化、大型化して、人の力では止めようがない。作業を始める時などの声掛けが一番重要だ」と話す。 8・5ヘクタールでタマネギを生産する須河孝子さん宅も、家族同士で声掛けを徹底する。家族が農機に手を挟んでけがをしたことがあり、息子の翔一さん(32)の就農をきっかけに、農機を動かす時は周囲の確認や声掛けを必ず行うようになった。それで孝子さんやパート従業員も、「安心して働ける」と実感している。 一方、JAきたみらいの職員は忙しい農作業の中で事故を防ぐ対策に関心を持ってもらうことの難しさも感じているという。担当者は「啓発活動で意識を変えてもらうことに加え、農機などの安全性をさらに高めていく必要がある」と話す。
日本農業新聞