「脱・事務方」職員を育てる大学が生き残れる理由、生き残りに不可欠な「組織運営のプロ」 志願者数増加に頼る量のアプローチには限界
志願者数に頼るだけの学生募集では限界も
多くの大学は、学生募集の改善を重要課題と位置づけています。これまで多くの大学が、「志願者の数を増やせば入試の競争倍率も上がり、優秀な学生も獲得できる」という、量で質を担保するような発想で募集活動を行ってきました。 志願者数最大化のために学食などをきれいにし、多くの広告費をかけてオープンキャンパスの来場者を集め、入試科目数を減らすなどして出願のハードルを下げる。一回の入試で全学部を併願できる制度も、志願者数を増やすうえでは有効だったかもしれません。 ただ18歳人口の減少が続く以上、この発想には限界もあります。これまでと同水準の志願者数を今後も維持しようというのなら、オープンキャンパスや高校訪問の頻度を上げたり、広告費を倍増させたりといった施策も必要になるでしょう。 費用対効果、労力対効果はどうしても落ちてきます。華やかな広報や出願しやすい入試制度は、入学後のミスマッチや中退のリスクを上げかねません。大規模な投資によってキャンパスを都心に移転する大学も増えていますが、移転先のマーケットもいつまで安泰かはわかりません。 さまざまな大学から持続可能な学生募集のあり方について相談を受けるのですが、できる限りミスマッチを減らし、入学者をしっかり育てて地域からの信頼を得る、そんな学生獲得の方法も模索せねばなりません。今後も「量」を追うことは大切ですが、組織に余力があるうちに異なるアプローチも並行して開発していくことが大事です。あまりに中退率が高い場合はその原因を探り、改善するといった施策も必要でしょう。 こうした取り組みをしていると、大学組織が抱える課題がよく見えます。 実は外部から言われるまで、自学の中退率や留年率に誰も気づいていなかったというケースがしばしばあるのです。学生のデータにアクセスできる職員たちがみな、「その数字を調べることは自分の担当業務ではない。前任から引き継いだ作業にないし、誰からも指示されていない」と考えている。 中退予防には高校生段階での進路ミスマッチをなくす取り組みも大事ですが、教務部や入試広報部といった部署間での連携が難しいというケースもあります。「本学はこの層の学生を大きく伸ばせている」といった、学生募集で有効に使えそうなデータがあっても、それが広報部に届いていません。 非効率に増え続けるタスク、変えにくいルーティンワーク、そして高い部署間の壁。非効率なやり方だと思っていても前年踏襲を続けてしまう。こうした大学組織のありようが、学生募集も含め、必要な改革を妨げている場面は多々あるように思えます。逆に言えば、職員が自主的に動ける組織にすることで進む改革もあるはずです。