現在のニュースは“回転寿司” 時代の変化にBBCはどう対応する?
恋愛や占いも「ニュース」に
藤村氏は、ニュースの「境界線」が変化したと分析する。ただそれは収縮しているのではなく、拡大しているのだという。スマートニュースの例を持ち出し、恋愛や占い、ファッションなどのように従来のニュースの定義に入ってこないものも、ニュースとして提供すると、「旬の情報として読んでくれる人が膨大にいるという事実に突き当たる」。ニュースの輪郭が広がっていく時期なのだと語った。 そうした現状に対して、イーガンCEOは「最終的には、私たちがニュースとは何かを定義するのではない。視聴者がニュースを定義するのだ」と応じる。「ソーシャルはニュースの背景を表すには非常にいいツールで、若い人に関心を持たせるのにはいいツール」。ただニュースの内容が重要になってくるとも付け加えた。
ソーシャルが「編成」に影響を与える
津田氏は、メディアによるこれまでの「上から」のアジェンダ設定には反発があるとして、田端氏の「回転ずし」理論に賛同する。メディアの役割については「取材をして、検証してというベースの部分は変わらない」との見方を示したが、ソーシャルの登場によって変化したのがニュースの「編成」の概念だと指摘する。 先日、シリア難民をやゆするかのような日本人漫画家のイラストがネット上などで批判された。この出来事はBBCでも記事化され放送されたが、このように、ツイッターなどで“炎上”したことがニュースの編成に影響を与えたのだという。 「ニュースの定義は視聴者が決める」とイーガンCEOが述べたことに関連し、田端氏は「デジタルメディアは記事へのアクセス数を常に見ることができる。アクセス数を増やすことへの誘惑が常にある状態」と、視聴者に寄ることへのある種の危うさについて言及した。
こうした閲覧数目当てのコンテンツづくりに対して、イーガンCEOは「視聴者の要求を満たすのは重要だが、それには慎重でなくてはならない。求めているニュースだけを配信するところまで行くと、真剣なジャーナリストとして責任をまっとうできなくなる。キュレーション編成の仕事ができなくなる」と危機感を表した。 そして、その現象が単なる流行りにすぎないのかどうか、それを判断できなければジャーナリストではない、と断じ、「伝統的な価値観とスキルを持ってジャーナリズムを突き詰めてめていかなければならない」と語った。