季節限定モデル、裏の顔はオツボネ?「ツタウルシ」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #40
季節限定モデル、裏の顔はオツボネ?「ツタウルシ」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #40
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します! 子どもたちの運動会で忙しい10月は過ぎ、気づけば11月。立冬を迎えたとたんに吹き荒れるからっ風で、体調を崩す人が続出中。「寒暖差アレルギー」なる言葉がメジャー化するなんて、子どものころは思いもよらなかったというのが、昭和世代の思いであります(昭和を代表して語ります! )。さて、そんな時期を迎えると期待が高まるのは、低標高地の紅葉。秋になったとたんに話題をさらう、あの花……おとい、アノ“葉っぱ”に登場いただきます。
え……?このコ、だれ?
Data ツタウルシ(ウルシ科) 一般的な花期:6~7月 おもな生育場所:亜高山帯の林内など。 かつて昭和の新聞を彩ったマンガに描かれていたのは、通勤電車の中で化粧に勤しむ女性と、それを見守る初老の男性。顔のパーツがうす~いすっぴん女性が、メイク完了時にはパチっとお目々、ド派手な顔になって男性はびっくり仰天……と、そんな話を思い出します。今回なぜこんな話をするのかというと、ツタウルシの花はおそらく、ほとんどの方がスルーしてしまうでしょうから。こうして写真を出しても、「は? だれやねんワレ」という反応が全世界(! )から聞こえてきます。こちらがすっぴんとするならば……。
あ~、あんたか!!シツレイしました!
こっちがメイク完了後、ってなわけです。この写真を見ると、「知ってる! 」という人も多いのでは。そう、秋になると森を彩る立役者・ウルシの仲間。なかでもツルで木々に巻き付いて赤く染め上げる、その名も「ツタウルシ」です。見分けはごく簡単。3枚セットのとがった葉、そして不規則な切れ込みが入るというウルシならではの特色も。ブドウ科のツタと間違えないで、という声もありますが、ブドウ類は葉っぱがセットになりゃーせん。「三出複葉」で、まっかっか。これなら、間違いなし!
お顔は一致しません
盛夏の時期は、こんな感じ。生粋のハイカーならば、こんなシーン、見たことあるハズ……ですよ? 私の知りうる限り、500mほどの低標高から分布するので、めずらしい植物ではありません。と、と。うっかり葉っぱの話題ばかりになってますが、少し上にタップ&スクロールして、すっぴん(花)と見比べていただくと。メイク後(真っ赤な葉っぱ)と一致しない! というのがホンネではないでしょうか。おかしいな、すっぴん(花)も咲いていたなんて……というツブヤキが聞こえたのも、無理からぬことでしょう。