製薬世界大手ファイザー、たった3カ月で「武田薬品工業の売上1年分」を稼ぐワケ
大型連休中も、アメリカの有力企業による決算発表が相次いだ。中でもひときわ目立ったのが医薬品メーカー世界大手、ファイザーの第1四半期(2022年1~3月)決算だった。 この記事の写真を見る 売上高は前年同期比77%増の256億6100万ドル(約3.3兆円)、1株当たり利益(調整後、以下同)は同72%増の1.62ドルだった。日本の医薬品メーカーで売上高トップである武田薬品工業の2022年3月期の年間売上高計画は3.5兆円。ファイザーは、円安の影響もあるとはいえ、たった3カ月で武田の1年分を稼いだことになる。
■ワクチンは179カ国で34億回分近くを供給 売上高の増加率で見ても、世界最大手のロシュ(11%)や2位のノバルティス(5%)をはるかに上回る好調ぶりだ。決算発表当日(5月3日)のファイザーの株価は2%近く上昇した。 当社の急成長を牽引しているのは、ドイツのビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンの「コミナティ」だ。売上高は前年同期比3.8倍の132億2700万ドルで、全体の過半を占めた。これまでに179カ国で34億回分近くを供給している。
第1四半期は、子ども向けの接種やブースター(3回目)接種が拡大。当社は引き続き、5才未満への接種や5~11才向けのブースター接種の開始を目指す。 オミクロン株をはじめとする変異株に対応した次世代ワクチンの研究開発も続く。オンライン決算説明会で当社のアルバート・ブーラCEOは、「数カ月以内に関連データを発表できるだろう」と語った。 コロナ関連はワクチンだけではない。飲み薬の「パクスロビド」は2021年12月以降にアメリカ内外で順次発売され、第1四半期の売上高は14億7000万ドルだった。日本では「パキロビッド」として2022年2月に製造販売の特例承認を取得している。
経口抗凝固薬の「エリキュース」や肺炎球菌ワクチンの「プレベナー」が2桁増収となるなど、コロナ関連以外の主力も堅調だった。 2022年度の通期業績についてはコロナ関連のワクチンや治療薬をはじめとした研究開発費の増加などを理由に、1株当たり利益の見通しを6.35~6.55ドルから6.25~6.45ドルへと若干ながら下方修正。一方、売上高の見通しは980億~1020億ドル(13兆円前後)で据え置いた。そのうち新型コロナのワクチンの売上高は約320億ドル、飲み薬は約220億ドルを見込む。