トヨタ自動車が技術流出を恐れず中国企業と手を組む意図
2020年における自動車生産台数トップは中国で、2523万台。第2位のアメリカは882万台で中国の35%でしかない。以下、日本、ドイツ、韓国と続くが、それぞれ中国の生産台数に対する比率は32%、15%、14%の水準である(出典:GLOBAL NOTE、以下同様)。
生産と販売の状況は異なるが、その販売のデータで比較しても、2019年のアメリカの台数は中国の68%に留まっている。
日本の自動車市場は、市場の成熟化、経済の低成長に若者の自動車離れも加わり、厳しい状況が続いている。企業が成長を続けるためには輸出の拡大が不可欠だ。どうしても、世界最大で成長余力も大きい中国市場に活路を求めざるを得ない。
トヨタ自動車は次世代の戦略製品として長年開発を続けてきた水素燃料電池車(FCV)の開発を中国企業と組んで始めている。
3月29日の中国本土マスコミ報道によれば、トヨタ自動車と北京億華通科技(688339、上海A株)は、双方が22億5000万円を出資し、両社の間では2社目となる燃料電池合弁会社を設立するという。
北京億華通科技は清華大学系の企業である。国家組織に近い北京億華通科技の政治力、情報力を借りて、中国の法規に適合する水素燃料電池を開発すること、中国のFCV市場にスムーズにアクセスできるようになることを目指しているとみられる。
トヨタ自動車は2019年に北京億華通科技と60kw水素燃料電池発動機の研究開発を目的とした提携を始めた。2020年6月には北京億華通科技に加え、中国第一汽車、東風汽車集団、広州汽車集団、北京自動車集団といった中国の国有大手自動車メーカーと北京市に合弁会社を設立すると発表した。この合弁会社では商用車用の燃料電池システムの開発を行う。
電気自動車メーカーにはFCVは簡単に作れない
興味深いのは、国有大手自動車メーカーとも手を組んで開発を進めている点だ。
本土電気自動車市場では、テスラ、BYD、上海蔚来汽車などの新興メーカーや、吉利自動車、長城汽車などの国内民営自動車メーカーに先を越された感が強い。既に高級車から低価格車まで、新興勢力に席巻されてしまっている。