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『これは小説ではない』著者、佐々木 敦さんインタビュー。「批評家としての活動の帰結とも言えます」

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クロワッサンオンライン

撮影・黒川ひろみ(本・著者)

「批評家としての活動の帰結とも言えます」

小説とは何なのか。事典によっても定義が異なるこの文章表現の在り方に、それ以外の分野を「小説ではない」とすることでアプローチしていくという、実に斬新な小説論集。貫通する表現分野は多岐にわたるが、それは佐々木敦さんが批評してきた対象でもある。 「確かに僕は今まで様々なジャンルのことを書いてきたので、世代によっては音楽や他のカルチャーの人という印象が強いかもしれません。小説や文学について書くようになったのはここ10年ぐらいのことですが、もちろん前から小説は読んでいたし好きだった。そして小説が何なのかというこだわりがあってずっと考えてきました。考えても考えてもわからないことが残るのが、僕にとっての小説。この本が批評家として、またその以前からやってきたことの一種の帰結と思えるのは、僕のこれまでを全部入れてるからなんですね。

映画も音楽も写真も演劇も、いろんなものを。とはいえ、この本を書くために、すごく変わった小説論を書くために新たに勉強したわけではなく、単にいろんなものが好きだったからなんです」

知られざる名作を紹介するのは使命感みたいなもの。

その「いろんなもの」には本書の各章で触れることができるが、若手演劇集団から監督不詳の8ミリ映画まで、一体どこで見つけるのかというような作品も多く、佐々木さんの感性の深度に驚く。 「僕は自分の存在も書いてきたことも、すごくマイナーでマージナルなものだと自覚してるんですよ。それもやはり、たまたま好きで興味があったことが、客観的には非常にマイナーだったというだけ。だから一部のマニアが持つ、少数性の裏返しのプライドみたいなものはなくて、どっちかというと“(マイナーで)すみません”という気持ちです。一方で、自分が好きなものについては、もっと多くの人が興味を持てばいいのにという思いも強い。だからどのジャンルでも、まだあまり知られていないものを取り上げてきたんです。使命感みたいなものですね」 ある意味、異端とも言える批評活動を長年続けてきた佐々木さんは、今年4月、初の小説「半睡」を発表し、同時に「批評家卒業」宣言をしてしまった。 「僕なりの謎のけじめみたいなもので、小説を書く時は批評家の看板は下ろすことが同時だと思っていた。だからなかなかできなくて、ここ数年は他の出版や連載を計画してやっていたんです。この評論も、連載させてくれる媒体があり、すごく満足できる形で連載を終え、本にできた。同じく小説もちゃんと発表することができた。それはやっぱり何十年もこの仕事をしてきたから、能力的にも立場的にも実現できたわけで、ありがたいこと。だから2020年は、数年準備してきたものがいよいよ結実した、感慨深い年ですね。まあでも完全に引退しますというのでもないから実は(笑)。結局グズグズやっていくんです、きっと」

『クロワッサン』1026号より

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