どうやって手に入れた? ヤフオクにロシア軍のスコープ 出品しているA氏に事情を聞いてみた
〈実物PSO-1スコープの初期型です。(略)実際に使われていたものなので傷やへこみ等があります。(略)昨今の情勢で今後の入手が厳しくなるかもしれませんのでこの機会に是非〉 【画像】7万円で落札されたロシア軍のスコープ ロシア軍の軍事物資が、日本のオークションサイトで売買されている。これは、ヤフーオークションに実際に書かれていた紹介文で、落札金額は7万円也。同サイトで売買したことのある軍事マニアが解説する。 「2月のウクライナ侵攻後も、〈実物〉〈官給品〉といった単語をまじえた出品が頻繁にあります。レプリカではなく実物を入手するのはマニアにとってステイタス」 冒頭の売り文句でロシア軍のスコープ(照準器)を出品しているA氏は、この1年間で約20個の照準器を売却。総売り上げは130万円を超えている。A氏以外にもロシアの軍服や弾倉を売買している人は複数いる。説明文などでは個人輸入とあるが、法的に問題はないのか。 「スコープは、ライフルなどの銃器に付ける望遠鏡のようなもので狙いを定めるのに使われます。軍用品ではありますが、税関での分類は光学機という扱いなので輸入は容易い」(同前) ロシア側ではどうか。 「ロシアでは軍の管理品の横流しや、払い下げ品の売買が横行してきた。外国組織への譲渡は刑事罰の対象ですが、個人間の売買は抜け穴になっています」(ロシア人ジャーナリスト) A氏のSNSを見ると、どうやら地方公務員のようだ。本人に話を聞いた。
A氏があえてロシア軍にこだわる理由
「売買は趣味の延長で始めました。個人輸入は送料が高くつくので、欲しいものを買うときに複数個購入し、送料分ぐらいは稼げるように上乗せして売りに出しています。売却で利益はほとんど出ておらず、確定申告の必要もない。(公務員が禁じられている)副業にもあたりませんよ」 輸入はどのように? 「ネットで知り合った在露邦人の方にお願いして、現地のフリマサイトで落札してもらい、それを個人で輸入しています。年代によって形も微妙に違うので、珍しいものを次々に収集するのが楽しいんです」 あえてロシア軍にこだわるのには理由があるという。 「法規制が厳しい米軍と違い、ロシア軍のものは容易に入手できるし、価格も10分の1くらいで安いんです」 だが、安値とはいえ、ロシア軍関係者に利益を与えていることにならないのか。 「仕入れたのはウクライナ侵攻の前。買っているのは死蔵品や払い下げ品が主で、現役の軍関係者に利益が渡っているとは思えません」 そしてこう嘆息するのだ。 「侵攻でこれまでのように照準器が入手できなくなって残念です……」 ウクライナ侵攻の多大な影響は、想定外の世界にも及んでいた。
「週刊文春」編集部/週刊文春 2022年6月30日号