YouTube広告活用でEC売上が2.58倍! 大丸・松坂屋が取り組んだマーケティング施策
失敗の要因として挙げたのが「コミュニケーション戦略の不在」だ。製作費がないことを言い訳にして、「何のために」「誰に向かって」「どうやってコミュニケーションをとるか」「PDCAをどう回すか」を思い描くことができず、YouTubeをはじめることが目的化してしまっていたという。「戦略・目的がないので、失敗を次に活かかすこともできずに終了してしまった」と、西本氏は当時を振り返る。 転機となったのは、現部署に異動した後の2016年。担当していたLINE公式アカウントが、経済産業省の「ソーシャルメディア活用ベストプラクティス」に選定された。大丸松坂屋百貨店のキャラクター「さくらパンダ」を全社を挙げて活用していたことが選定の大きな理由だが(つまり自分の成果ではない部分が大きいが)、定期的に集客・売上に寄与する企画の実施が評価を得たことにより、コミュニケーション戦略の重要性に改めて気付いたという。 ┌────────── まずは戦略を決めること。そうすれば、使うべきメディアが決まる。その上でPDCAを回していく。これを会社全体で一緒にやりたいと思い、現在に至ります(西本氏) └──────────
「折込チラシ」を「YouTube広告」に置き換え
では、なぜ、使うべきメディアがYouTubeだったのだろうか? 百貨店における販促といえば、これまではパンフレット・カタログ・郵便などの紙媒体が定番だった。だが、各種統計調査の結果などからは、消費者の行動やメディア接触時間がデジタル媒体へシフトしていることが明らかになっている。
そこで大丸松坂屋百貨店では、2017年から自社メディアをDX化し、紙媒体からデジタル媒体へと既存メディアを置き換えることにした。デジタル広告の効果検証を行うための社内体制も整備し、2018年からは、年間平均400キャンペーンを実施して仮説検証を繰り返した。
今、西本氏らがYouTubeを重視しているのはまさにこの検証結果によるものだ。YouTubeは利用者数が圧倒的に多く、あらゆる年代・性別の顧客へリーチできる。そのためターゲティングの自由度が極めて高い。また、動画メディアであることから、静止画のバナー以上にリッチな訴求ができる。