北川景子・中村倫也の自然体な魅力「他者からの視線や評価も今は気にならなくなりました」
迦葉は、ずっと胃の中に石を入れられているような役だった
2月11日公開の映画『ファーストラヴ』で初共演を果たした北川景子と中村倫也。ある殺人事件の真相を追う公認心理師の由紀と弁護士の迦葉。一言では表し尽くせない複雑な関係を演じたふたりだが、実際には1986年生まれの同い年。まるで級友のようなやりとりから、お互いへの信頼が垣間見える。 【全ての写真】『ファーストラヴ』北川景子&中村倫也インタビュー撮り下ろしフォト(全11枚) 第159回直木賞を受賞した傑作サスペンスに、北川と中村はどのように挑んだのだろうか。 撮影に入ると、自然とふたりの距離感が縮まる。ボーズも、目線も、カメラマンが細かく指示を出さなくても、まるであらかじめ決められていたかのようにリンクする。その以心伝心ぶりが、ハードな撮影期間を通じて築いたふたりの結束の証だ。 「いい年して人見知りというのもあれなんですけど、私は初めて会う人にはいきなり素を出せないタイプで。現場に入るときは場を盛り上げようというか、つい『北川景子です!』って感じで入っちゃうんですけど」(北川) 「(お高くとまった口調をつくって)『北川ですけど何か?』でしょ?(笑)」(中村) 「違う(笑)」(北川) 「『ソイラテをちょうだい』みたいな。見たことないけど(笑)」(中村) 「あはは。でも、中村さんに対しては最初からそういうのがなくて。無理に人見知りではございませんという感じを装わなくても、いい意味で緊張している自分のままでいけた。そんな自分にびっくりしました」(北川) 肩肘張らない空気感は、演技にも自然と表れた。 「中村さんはお芝居も百戦錬磨の方ですし、助けてもらおうみたいな気持ちもちょっとあって。自分で台本を読んだだけじゃわからないようなところも、中村さんがこういうお芝居をされるんだったら私はこうしたらいいのかなって引っ張ってもらうことが何度もありました。なんか楽だったんですよね」(北川) 「こんな信頼される俳優います、他に?(笑) でもそこまで思ってもらえていたなら光栄です。芝居って相手のためにするものなので。役者だけに限らず、対人関係自体、楽な方がいいですよね。だから、北川さんが楽だったなら良かったです」(中村) 「あとは映画を観て印象的だったのが、迦葉と環菜さん(芳根京子)の面会シーン。あそこで環菜さんに向き合っている迦葉の顔を見て、真面目にやっているんだと思いました」(北川) 「…あれ、この主演、(迦葉を)茶化してます?(笑)」(中村) 「いやいや(笑)。環菜さんのために動いている目的は一緒なんですけど、(北川演じる)由紀と迦葉ではアプローチが違って、ふたりでいるとつい口喧嘩になっちゃうから。ある場面で迦葉に『本当に環菜さんのこと助けたいと思っているの?』と聞くシーンがあるんですけど。私も本気でそう思っていたんですよ」(北川) 「あははは」(中村) 「だからこそ、環菜さんと接している迦葉の顔を見て、迦葉も本当に救ってあげたいと思っているんだというのが伝わってきて。あれは、私が見たことのない顔でした」(北川) 「由紀の前ではずっと怖い顔してるからね。環菜を機に由紀が壊れていくのを見るのも怖いんだよ、迦葉は。繊細なんです」(中村) 「迦葉は、由紀がいないところの方が人間らしい感じがしました」(北川) 「そうだね。由紀の前では、由紀を想って、鎧を着ているんだと思う。僕にとっては、ずっと内臓を握られているような感覚でした。何て言うんですかね。いつもヘラヘラしてるんですけど、撮影期間中、ずっといたんですよ、迦葉が、僕の中に。だから、ずっと胃の中に石をつめこまれているような感じだった。そういうふうに役と共に生きたことがあんまり多くないので、それはひとつのチャレンジだった気がします」(中村)