もの凄く「絵になる」クルマ ジャガーEタイプ S1(1) そのすべてへ夢中になった15歳
15歳の頃、そのすべてに夢中になった
英国の放送局、BBCの海外特派員も務めた著名なジャーナリスト、マイケル・バーク氏。ジャガーEタイプが華々しくデビューを飾った1961年には、ジェームズ・ボンドの原作を好む15歳の青年だった。 【写真】スタイリングにもメカニズムにも魅了 ジャガーEタイプ S1 同時期の英国車たち (120枚) 「その頃暮らしていたのは、ローバーの工場があった(グレートブリテン島中部の)ソリハル。街を走るクルマは、ブラックばかりでしたね」 「家族でドライブする時は、スピードメーターが時速60マイル(97km/h)を超えているかどうか、いつも確かめていました。メルセデス・ベンツなどはたまに見かけましたが、殆どは国産車。外国のクルマは珍しかった時代です」 「そんなタイミングで、Eタイプが登場したんです。そのすべてに夢中になりましたよ」 映画「007」のボンドカーに選ばれることはなかったものの、高度な技術と実際の速さ、美しい姿などが、若きバークへ強い印象を刻んだ。理想的なスポーツカーとして、当時のテレビ番組に登場することは少なくなかった。 それから30年後、ニュース番組のキャスターへ就任。南アフリカで問題化していた人種差別、アパルトヘイト制度に対する積極的な報道などでキャリアを積み、経済力を掴んでいった。念願だった、Eタイプの購入を実現させた。
バブル状態にあった中古車価格が急落
今回ご紹介するダークブルーの1台が、まさにそれ。アルミニウム製のダッシュボードを備える1962年式のS1 クーペで、最近見事にレストアされている。 「南アフリカからグレートブリテン島へ戻り、人生を再構築しようと考えたんです」。78歳を迎えたバークが、落ち着いた口調で話す。 「テレビ番組のプレゼンターに就任した30年ほど前、バブル状態にあったクラシックカーの価格が急落。運良く、2万5000ポンドで買えたんです。悪くない取引きでした」 彼が購入を決める2年前、AJB 396Aのナンバーを付けたこのEタイプは、自動車雑誌の表紙を飾っている。ミルレーン・エンジニアリング社という、小さな専門ショップによってレストアされた直後の設定価格は、6万5000ポンドだった。 「もの凄く絵になるクルマですよね。どの角度から見ても悪くない。現代のクルマと比べると、幅の細さには驚きますが。後ろ姿は、おもちゃに見えるくらい。正面はライトのフェアリングのおかげで、見栄えするようになりました」 「ヘッドライトの明るさは、初期のS1よりS2の方がずっと良いです。これは、蝋燭で照らしているように暗いんですよね」。歴代のジャガーで最もアイコニックなスタイリングを称賛しつつ、不満も認める。