米中対立が続く中、したたかに生き残りを目指すASEAN諸国
新型コロナウイルスという見えない敵との戦いに終われ、国際外交に空白期間ができた2020年。2021年の外交のキーワードになるのはやはりあの二つの大国と──。 朝日新聞元政治部長の薬師寺克行氏が解説する。
2021年も外交の中心は米中関係
新型ウイルス感染拡大を受けて2020年の外交の世界はほぼ完全に身動きが取れない状況となった。2021年になってもしばらくは同じ状況が続きそうだ。しかし、そのなかでも新しい年の外交の中心はやはりバイデン新政権がスタートする米国と、米国と対立しつつ国際社会への影響力を増している中国の動きとなるだろう。 過去の例を踏まえると、1月に発足するバイデン政権は、ホワイトハウスや国務省、国防省の政治任用ポストの陣容が固まるまで数ヵ月はかかる。従って新政権の対外政策が具体化してくるのは来年半ば以降になるだろう。 そこで注目されるのは何と言っても対中政策である。トランプ大統領は中国からの輸入品に高関税をかけるなど貿易不均衡を理由に強硬姿勢を続けた。バイデン氏がこうした対中政策を180度変えて柔軟な姿勢に変わることは国内政治的にも難しいだろう。しかし、手法は変わるだろう。 すべてを金銭的バランスに置き換えて政策を考えたトランプ大統領とは異なり、バイデン氏の場合は、5Gなど最先端技術や知的所有権の問題、中国国内の人権問題、さらにはアジア地域を含めた安全保障問題など、幅広く本質的な問題で中国と向き合うことになりそうだ。その結果、米国の対中政策は厳しくなることはあっても軟化する可能性は低いだろう。 一方の中国は、コロナ対策に成功したと喧伝し、中央アジア、東欧、アフリカ諸国など途上国を相手に自らの影響力の及ぶ範囲の拡大に力を入れている。一方で米国との対立が決定的となった場合に備え、米国に頼らずとも自律的に経済を発展させることを可能とする「国内大循環」政策を打ち出すなど、柔軟な戦略を実践しつつある。