なぜ井岡一翔の“リトル・パッキャオ”福永亮次との“代替大晦日マッチ”が急転決定したのか…使命感と延期統一戦への布石
第二の理由は、井岡の意思だ。 いくら代替試合への条件が整っても、悲願の統一戦が流れたショックに打ちひしがれていた井岡の気持ちが切り替わらなければ、試合は難しく、ジムサイドも、井岡の意向を最優先に「中止」もやむなしの方針を固めていた。だが、井岡は、大晦日のリングに立つことを決断した。 この日、自身のインスタグラムで、「今年の大晦日決まっていた統一戦は中止になってしまい、凄く複雑な心境ではありましたが、色々と考えた結果、今年の大晦日も闘う事に決めました」とファンに報告した。 「色々と考えた」のは、日本のボクシング界を背負うビッグスリーの責任と、大晦日の顔としての使命感である。 「やるからには全力で挑み、皆さんに何か感じてもらえる試合をして、必ず勝利します!今年最後の日も盛り上げたいと思います!」と綴った。 加えて、早ければ、4、5月にはセッティングされるであろうアンカハスとの統一戦を制するためには試合間隔を空けずにリングに立つことがベストであり、ここまで準備してきた成果をみたいというボクサーとしての向上心がある。 急遽、挑戦者に決まった福永は、アンカハスと同じサウスポーで、背丈も、右フック、左ストレートを武器にするハードパンチャーと言う点で、ファイトスタイルも似通っている。井岡自身は、これまで福永の試合を見たことはなかったそうだが、「仮想アンカハス」としても最適な相手なのだ。 井岡は、中止決定後も、練習のペースを落とすことなく、アンカハス戦に向けてのトレーニングスケジュールを守った。 29日に予定されていたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との世紀の一戦が延期となったWBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(帝拳)も、延期決定の失意の中、予定されていたスパーリングをこなしたが、一流のボクサーのメンタルは、それほど強い。 第三の理由は、福永という最適な挑戦者の存在だ。大チャンスが降ってきた福永は、その激しいファイトスタイルと風貌から、“リトル・パッキャオ”の異名を持つ。WBOアジアパシフィック、日本の2冠王者で、11月に返上したがOPBF東洋太平洋のベルトも持っていた。事実上のスーパーフライ級の“アジア最強ボクサー“である。