東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ
もしいくつになっても若い体や心のままで生きることが可能となったら、社会、ビジネス、あなたの人生はどう変わるのだろうか? ハーバード大学医学大学院の教授で、老化研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏の全米ベストセラー『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』では、人類が「老いない身体」を手に入れる未来がすぐそこに迫っていることが示され話題となっているが、日本でも、老化研究に関する大きなニュースが飛び込んできた。 この記事の写真を見る
2021年1月15日、東京大学医科学研究所の中西真教授らのグループが、老齢のマウスに「老化細胞」だけを死滅させる薬剤を投与し、加齢に伴う体の衰えや生活習慣病などを改善することに成功したと米科学誌『サイエンス』に発表したのだ。老化研究はどこまで進化しているのか。中西氏に話を聞いた。 ■老化の原因「老化細胞」除去とは ――老齢のマウスの「老化細胞」を特異的に死滅させる薬剤を発見されましたが、この「老化細胞」の除去とはどういったことでしょうか。
「老化細胞」とは、ストレスによってダメージを受けるなどして、増殖できなくなってしまった細胞のことです。 60年ほど前、アメリカのヘイフリック博士が、正常なヒトの細胞を試験管の中で培養していくと、一定の分裂回数のうちに増殖を停止して、二度と増殖できなくなるステージに入ることを発見しました。この状態になってしまった細胞を「老化細胞」といいます。 細胞は、つねにさまざまなストレスにさらされており、ストレス過多になった場合、遺伝子に傷が入ったり、タンパク質がダメージを受けるなどします。軽微なダメージなら、細胞は修復して生き続けることができますが、修復不可能な損傷の場合、細胞そのものを殺すか、細胞の老化を誘導し、異常な細胞を蓄積させない仕組みが働きます。その結果、細胞は増殖することができない老化細胞となってしまいます。