【広島】世代交代・若返りを急ぐ理由 九里亜蓮から始まる〝主力流失〟を想定したオフ
広島から海外FA権を行使した九里亜蓮投手(33)のオリックスへの移籍が決まった。オリックスが12日に電撃発表し、背番号も「22」に決定。メジャー移籍の可能性もあった中での国内移籍にファンや球界内からも驚きの声が広がっている。 【写真】広島でファミレス対談を行った九里亜蓮と新日本プロレスの内藤哲也 確かに右腕の権利行使はMLB挑戦も視野に入れたものだったが、広島側は当初から国内他球団への移籍についても想定していた。この日、九里から結論を伝えられた広島・鈴木清明球団本部長(71)は「選手の権利だから仕方がない。若い子たちが出てきてくれれば」と冷静に受け止めた。 その一方で赤ヘルは当面の間、毎年にわたって主力流失を想定しなければならないオフを迎える可能性が高いのも事実。実際に今オフは新井貴浩監督(47)や編成フロントが「若返り」「世代交代」などのワードを発信する機会が多く、組織の新陳代謝を急ぐ雰囲気が醸成されている。 来季以降もチーム内には、順調に一軍登録の日数を重ねる前提でFA取得予定の主力が多数控えている。今季も投手陣の中心的存在だった先発4本柱のうち、この日退団が決まった九里以外にも、左腕エース・床田寛樹投手(29)が2026年中に国内FA権を取得予定。将来的にポスティングシステムでのMLB挑戦を視野に入れる来季大卒6年目の森下暢仁投手(27)もチーム、個人ともに好成績を収めれば、最速で来オフにも海を渡る可能性がある。 若手投手育成を急がねばならない理由は他にもある。NPBと選手会の間で毎年話し合いの場が持たれている国内FA権短縮の議論において25年以降、大卒7年・高卒8年の現行制度から1年短縮となる流れもささやかれ始めている。仮にそうなると床田、森下ともにFA権取得年数が早まるシナリオも想定しなければならない。 今季は大瀬良、九里、床田、森下の4人で600回イニング以上を稼ぎ出した。九里のみならず近い将来、大瀬良以外の残る2人もキャリアの分岐点に立つことになるのは自明の理だ。もちろん「生涯広島」を選択してくれることがベストとはいえ、言うまでもなくFAは選手の権利。球団や指揮官が現有戦力の底上げによる新戦力の台頭を強く訴える背景には、このような複雑な事情も絡み合っていると言えそうだ。
赤坂高志