次戦引き分け以上で決勝T進出決定! なぜ崖っぷちのなでしこJはスコットランドに快勝できたのか?
何がなんでも決めてみせる。気迫と執念だけではない。先輩たちの思いも背負っている、という気概も強烈な弾道に込められていた。両チームともに無得点で迎えた前半23分。FW岩渕真奈(26)=INAC神戸レオネッサ=が放った一撃が、なでしこジャパンに勇気を与えた。 舞台をレンヌのロアゾン・パルクに変えて、14日に行われたスコットランド女子代表とのグループリーグ第2戦。格下のアルゼンチン女子代表との初戦をまさかのスコアレスドローで終え、崖っぷちに立たされた日本女子代表の今大会初ゴールを決めたのは、FIFA女子ワールドカップ通算12試合目の出場にして意外にも初先発だった、身長156cm体重52kgの小さなエースだった。 敵陣のバイタルエリアでこぼれ球を拾ったFW遠藤純(19)=日テレ・ベレーザ=が、左サイドから中央へ横パスを送る。ターゲットになった岩渕は右足でのトラップと同時に体勢を整え、次の瞬間、目の前に大柄な相手ディフェンダーがいる状況にもかかわらず、迷うことなく右足を振り抜いた。 無回転の強烈な弾道は相手の頭をかすめ、キーパーの上を襲って急降下する。虚を突かれたスコットランドの守護神の牙城に風穴を開け、豪快にゴールネットを揺らした先制弾に、日本女子代表の初代専任監督で現在は解説者を務める鈴木良平氏は「絶対に勝たなければいけない試合を、岩渕のゴールが勝てる試合に変えてくれた」と手放しで賞賛する。 「あの場面でシュートを打つ選手の心理として、ディフェンダーとゴールキーパーを避けてコースを狙おう、と思うのが普通なのに、岩渕は戸惑うどころかあえてど真ん中へ蹴った。最初からあのコースへ打つ、と決めていなければなかなか放てない一撃だと思う。 先制点を奪い、なでしこに流れを呼び込むのは自分の役割だと思っていたはずだし、見事に勝利への道筋を示してくれた。3大会連続で女子ワールドカップに出場し、豊富な経験を誇る岩渕だが、これまではチームの中心選手ではなかった。初先発した一戦で重要なゴールを決めたことで、本当の意味での中心選手になったと言っていい」