緊急事態宣言で公演中止を即断、前回の経験生きた東京アイドル劇場
2度目の緊急事態宣言が発令、またも大きな影響を受ける各界。芸能エンタメ業界も深刻な状況が続く。ジャニーズ事務所や吉本興業、劇団四季はじめさまざまなところで公演や舞台挨拶の中止、開催時間繰り上げ、イベントのオンライン化、あるいは観客数などに一定の制限を設けての実施といった措置が取られている。そんな中、多数のライブアイドルが出演する東京アイドル劇場はまず1都3県に緊急事態宣言が発令された7日に1月中の全公演中止を発表、チケット返金手続き処理に入った。ライブアイドルの世界は公演やイベントなど“3密”環境における活動が収益の中心だけにコロナ禍で甚大なダメージを受けているが、素早い公演中止決定の背景には1度目の教訓があったという。同劇場の運営会社TOGEKI代表取締役社長・ノトフ氏に聞いた。
休むなら早く休んだほうが…前回の経験から
「公演とりやめを決定する際にまったく悩まなかったわけではないのですが、前回の経験があったので『休むなら早く休んだほうがいいね』ということになりました。1度目の緊急事態宣言のときは前例がなかったので、どうしようとバタバタして、公演休止発表の前日まで逡巡があったんです。でも、お客様も演者様も前日になって公演がなくなっても困るので、今回はその経験から早い決定をと」 決断とともに、各出演者、現場スタッフ、会場(東京アイドル劇場は仮設のアイドル専用劇場で公演のたび会場を借りる形態)に連絡をして理解を得たという。 「ありがたいことに『なぜだ』と怒る人もいなかったです。演者側からするとイベントがなくなったぶん売上が下がってしまうわけで、こちらから出演を誘っておいて、すみません、とりやめますっていうのも厳しい話なのですが。中には『あそこはすぐ公演を中止にするからもういいや』って思う人もいるかもしれないですけど」
「お客様に無理をさせない環境作り」を
前例のなかった前回の経験がヒントになったようだ。 「1度目のときは宣言が出るか出ないかっていうところで、誰が中止を言い出すか、責任をどこが負うかってところの難しさがあったんです。東京アイドル劇場が中止するから演者の皆様の出演もなくなるのか、演者がみんな出ないからしょうがなく東京アイドル劇場も自粛するのか、いったいどこがイニシアティブを取って責任を取るのかっていう感じで、なかなか最後まで決断できなかったんです。演者の皆様も出演すると言った手前、うちに気をつかって、キャンセルしずらいっていう人もいたんですよ。なら、うちから自粛しますって言ったほうが演者の皆様も安心感あるのかなってことがわかりました」 もちろん、東京アイドル劇場としての“出血”を極力抑えるという意味もある。 「辞退する演者ももちろんいますし、うちとしても1日8組出る中で半分が出ないとなると正直ビジネス的に厳しい面が出てくるので、だったら会場費やキャンセル料も考え、早めに自粛させてもらったほうが演者、うち、双方の出血を極力少なく抑えられるかなと。あとは、好きなアイドルが出るというと、お客様も無理して来ちゃう。お客様にも無理させない環境作りをしなきゃいけない。じゃあ誰が制限かけるかっていうと、うちがやるしかないと考えました」 とはいえ劇場のダメージも相当に大きいはずだし、新型コロナウイルス感染拡大と懸命に戦うアイドル界、という美談でも済まない話だ。 「うちの場合、単純にいうと年間の利益の1/12が削られるわけですが、それで生きていけないわけではないので我慢しようと。これが半分になるとかであれば大変ですが、なんとかやれるかなっていうところですね。うちより演者のほうが辛いと思うので、出演したかった人たちには申し訳ないのですが。チェキの売上のバックで生活しているアイドルの子だと、家賃とかどうするんだって話になってくるし。休むことで守られる人たちもいれば、休むことで生活できなくなる人たちもいると思うので、休んだからといってみんながハッピーになるわけではない。そのあたりは複雑です。また、これが乃木坂46さんとかのメジャー規模になると売上が10~20%落ちただけで大打撃だと思うので、インディーズのアイドルとは比較にならないダメージだと思います」