ウクライナ空軍機がクルスク侵攻に参加 滑空爆弾でロシアの指揮所爆破
ウクライナがロシア西部クルスク州に侵攻して1週間たつなか、ロシア空軍は火力の大半をウクライナ軍の侵攻部隊への対応に振り向け、射程40km以上で衛星誘導される滑空爆弾(通称KAB)を1日に最大50発、国境を挟んだウクライナ側のスーミ州にある侵攻部隊の基地などに投下している。 50発というのは、ロシアがウクライナで拡大して2年半近くたつ戦争の1000kmにおよぶ前線全体で、ロシア空軍が1日に投下している滑空爆弾の数の半分にあたる。 一方、ウクライナ空軍も、ロシアの滑空爆弾と少なくとも同等の射程と命中精度がある衛星誘導の滑空爆弾を保有している。13日、ウクライナ空軍の戦闘機が、米国製のJDAM滑空爆弾をクルスク州内の目標に投下する様子とされる初の映像がソーシャルメディアで共有された。 この戦闘機は、クルスク州の前線から数km北の町チョトキノにあるロシア側の指揮所を攻撃したと伝えられる。注目されるのは、この空襲を行ったのはウクライナに最近到着した元デンマーク空軍所属のF-16戦闘機の一機ではなく、老朽化した旧ソ連製Su-27戦闘機だったとみられることだ。 F-16はJDAMを搭載可能だが、ウクライナ空軍は少なくとも当初はこの機敏な戦闘機を空中哨戒に使用し、より危険度の高い対地攻撃には投入しない方針であることをうかがわせる証拠がある。 クルスク方面で作戦行動を行う航空機のリスクは大きい。ロシアの軍事ブロガーらによれば、ウクライナ軍はこの方面に「相当な数」の防空システムを持ち込んでいるほか、ジャマー(電波妨害装置)も配備している。ジャマーは、衛星誘導の滑空爆弾も目標からそらせる場合がある。 ウクライナ軍の防空部隊は自爆型のドローン(無人機)による大きな支援も得つつ、ロシアのヘリコプター数機を撃墜している。一方、ロシア軍の砲兵部隊はウクライナ軍のブーク自走防空システム1両を損傷させている。 ロシア側もクルスク方面にかなりの防空システムを配備しているようだ。ウクライナ空軍のSu-27が滑空爆弾を投下後、戦場の上空で超低空飛行をしているところが目撃されたのは理由のないことではない。両軍のパイロットとも、敵レーダーに探知されるのを避けるため、なるべく毎回、できるだけ低い高度を飛行するようにしている。