マンハント大阪ロケ秘話<下>「ぜひ水都でアクションを」
30年前に大阪で撮影された「ブラック・レイン」の記憶
大阪といえば、約30年前に高倉健さんらが出演した映画「ブラック・レイン」の撮影地になったことがある。しかし、後に発売されたDVDなどでは、監督らが要望どおりの撮影ができなかったと述べている。 それに比べたら、今回の撮影では柔軟な対応をしているように見えるが、福原さんに聞くと「いや、実際は30年前と変わっていないと思います」と語る。しかし、ひとつ違う点があるとしたら「ダメだったら、別のカードをすぐに用意している点かもしれません」。 例えば、駅構内での逃走シーンや、あべのハルカスでのダンスシーンにしても「日中は無理だけれど、営業時間外なら対応できる」と製作側に答えた。そして、その誠意を示すことにより、製作側も「一生懸命やってくれている」とねぎらってくれて、あまりにも無茶な要求は控えているようにもみえたという。 「そりゃあ、ハリウッド映画とかは、一日中街を貸しますとかあると聞いているので、それは無理だと思います。けれど、今回はウー監督も私たちの努力を酌んでくれていたと思いますね」と福原さんは振り返る。 映画完成後に作品をみると、映像ではカットされていた場所もいくつかあった。福原さんに聞くと「大阪市役所庁舎は警察庁舎として撮影されてましたが本編ではありませんでしたね。あと、警察庁舎のロケ地に、堺市役所庁舎もあがっていましたね」と話していた。
昨年の中国公開後にハルカスでじわり効果も
昨年11月にこの映画が中国で公開されたときには、仲間と自費で香港の披露会場へ向かった。そして、苦労をともにしたスタッフたちが福原さんを見つけると、駆け寄って笑顔で抱き合ってくれた。抱き合った中には、ロケでケンカしたスタッフもいたが、そんなことは関係なしに喜びを分かち合った。 中国での公開後、あべのハルカスの担当者から「展望台で観光客が踊る姿があった」と報告があった。聞けば、その観光客は映画の中でみせた独特なダンスのポーズをとっていたという。 「中国ですごくヒットしているそうで、こうした効果がさっそくあるのはうれしいですね」と福原さん。近鉄グループホールディングスの公式サイトでも「ロケ地マップ」を公開したところ、アクセスも通常より伸びているそうだ。 ロケ地を誘致し撮影をサポートした福原さんにとって、これだけうれしい反応はない。そして、後にウー監督と会った時、まだロケ地選定の際に福原さんが「ぜひ関西で撮影を」と書いた手紙とともに渡した近鉄百貨店で購入した辛口の日本酒の話に。「ウー監督はそれをまだ自宅のリビングに飾っておられるそうです。『これは一緒に乾杯して飲みたい』と言ってくれて、すごくうれしかったです」