「選択肢が増えることはプラスだが…」 新株価指数「読売333」は「日経平均」をしのげるか? 専門家の見解は
ライバル、否、先達の壁は低くない。読売新聞グループ本社は新たに「読売株価指数」(愛称「読売333〈さんさんさん〉」)を創設し、来年3月から算出・公表を始めると発表した。先行して評価を確立している日本経済新聞社の「日経平均株価」を凌駕(りょうが)できるか。 【グラフで見る】脅威の成長性! 「S&P500」の株価推移 ***
読売333は、東京証券取引所などに上場中の企業のうち「日本を代表する」333社を構成銘柄とする予定。指数算出の委託先は野村ホールディングス子会社の野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングだ。 最大の特徴は「等ウェート型」と呼ばれる算出方法。時価総額の大きい企業の値動きに左右されやすい「TOPIX(東証株価指数)」や、株価が高い企業の影響を受けやすい日経平均に比べ、構成銘柄の値動きが均等に反映されるという。 読売広報部は指数創設の目的について「日本の報道機関として、新たな日本経済の指標を開発し、投資の選択の幅を広げたい」としたうえで、「日本企業に対する国内外からの投資を促し、『経済の好循環』に貢献」すると意気込む。
「“日本を代表する”指数になれるのかは疑問」
だが過去には失敗例も。 毎日新聞社は1998年から「日本株30(J30)」と呼ばれる株価指数を発表していた。「日本経済の的確な動向を示す株価の指標として、日本を代表する企業群30社を選定し、新たに開発したもの」(毎日新聞社長室)だったが、「2005年に(本紙の)証券面の再編等に伴い」(同)、わずか7年で掲載を取りやめた。現在、指数算出は行っておらず、公表再開の予定もないそうだ。 読売はそれを意識してか、 「過去の事例も参考にしつつ、新たな視点で日本経済の成長を見つめる代表的な指標となることを目指す」 と言う。毎日の轍を踏まないどころか、日経平均も退けてみせるという“宣戦布告”とも受け取れる。 株式評論家の植木靖男氏に見解を問うと、 「新指数の登場で、それをもとにしたETF(上場投資信託)も登場するでしょう。新NISA利用者の拡大を踏まえると新たな指数ができるのも必然の成り行きで、現状はETFが増え過ぎという印象もありますが、選択肢が増えること自体は投資家にとってプラスです」 と一定の評価をしつつも、 「読売が目指す“日本を代表する”指数になれるのかは疑問。TOPIXの創設後も歴史ある日経平均を見る人は多い。取引所自体が始めた指数でさえそうなのです。今後、新NISAが“相当程度発展していく”という状況にあるのかどうか見据えないと、結局、新指数の算出も意味がないことになりかねません」 読売の投資の帰趨に注目。 「週刊新潮」2024年12月12日号 掲載
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