脅しか、本気か?: 英豪主導で密かに進む2022年北京冬季五輪ボイコット計画
160以上の人権団体がIOCに開催再考訴え
また、世界60カ国以上の300以上の人権団体が、中国の人権侵害問題に対して緊急の対応をとるよう国連に呼び掛け、このうち160以上の人権団体が9月、IOCに人権侵害を理由に北京冬季五輪開催再考を求める書簡を提出した。「中国全土で起きている人権危機の深刻化が見過ごされれば、五輪精神と試合の評価は一段と損なわれる」としている。 ラーブ外相の発言を受けて同じ10月6日、米ニューヨークの国連で開かれた人権会議で、ドイツの主導により、英国や豪州、日本など39カ国が中国の人権問題を批判する共同声明を発表し、中国に対して100万人が収容されている新疆ウイグル自治区の収容施設に、国連人権査察団が「直接的で意味のある自由なアクセス」ができるよう求めた。 「国際社会におけるパートナーと連携したい」。ラーブ外相の呼びかけに真っ先に応じたのは、コロナ感染経路の独立機関による調査を主張したことに端を発して中国の経済制裁を受け、対中関係が「過去最悪」となっている英連邦の兄弟国、豪州だった。 国会議員の多くが超党派で、「1936年のヒトラーのナチス政権下で開催されたベルリン五輪と類似性」があるとして、北京冬季五輪のボイコットを支持し、豪州選手に不参加を呼びかけた。上院のレックス・パトリック議員とジャッキー・ランビー議員が動議を出して豪連邦議会は11月9日、北京冬季五輪不参加について審議、採決したが、過半数に達せず、不参加の決議には至らなかった。 しかし、中国が豪州産の輸入制限を継続し、外務省報道官が虚偽画像をツイッターに投稿するなど関係悪化が続いており、ボイコット論は「高度な長期戦」に突入した格好だ。 パトリック議員は中国共産党による深刻な人権侵害がある中で、「豪州選手の五輪参加は無謀で危険。道徳的に誤り」と主張、エリック・アベッツ上院議員は、IOCが「野蛮で権威主義的、全体主義的な政権」に開催を許可すれば、IOCの立場は損なわれると警告する。英国のスミス議員は、「中国の経済制裁を恐れて、五輪ボイコットを躊躇(ちゅうちょ)してはならない」と毅然(きぜん)とした対応を求めた。五輪ボイコットでも英国はまず、機密情報を共有する政府間の枠組みであるファイブアイズのアングロサクソン同盟国の豪州とスクラムを組む。 では、「特別の関係」の米国はどうだろうか。世界的な反中の「列国議会連盟」に加入している共和党のマルコ・ルビオ上院議員とロバート・メネンデス上院議員がボイコットを呼びかけ、3月には共和党のリック・スコット上院議員が主導して12人の超党派議員がIOCに22年冬季五輪開催地を再検討するよう要請した。スコット議員は五輪を中継するNBCに対し、人権に配慮して放映を取りやめるように求めている。