トヨタが描く“マイナス”エミッションの未来 寺師副社長インタビュー(5完)
池田:トヨタのそういう仲間づくりを見ていると、パソコンOSのWindowsを思い起こします。サードパーティーを引き込んでオープンにして、いろんなアプリケーションを勝手に作ってくれってオープン化したことで、いろんな発展をしたように、電動化のフルラインナップを用意して、それが最先端のFCVであろうとも、これをバンとオープンにすることでいろんな人がその使い方を考えるっていうことなんですよね。 寺師:ええ。もうすでに、サードパーティーが、例えばバスの屋根の上にタンクとセルを2台分載っけてFCVバスに改造しています。いわゆる制御も含めて。そういう前例があると、ほかのバス会社がFCをやりたいって言ったら、たぶん普通に載っけられる。少し一緒にやらせてもらえれば、バスは割と簡単です。今回やった大型トラックのカリフォルニアでの実証も、1回やれば次は割と簡単ですし。 池田:ラダーフレーム(トラックなどに多く用いられるハシゴ型フレーム)のほうが楽ですよね。モノコック(外皮に強度を持たせる構造方式で乗用車に広く用いられる)と違ってスペースがいくらでもありますから。 寺師:もうここに置いてくださいっていうスペースがありますからね。長期的にもやっぱりトラック、バスは重要です。走行距離が圧倒的に多いんです、乗用車と比べると。そうすると水素の使用量がどんどん増えて、そうなってきたら徐々にスタンドの数も増えていくと。 池田:スペース自由度が高いってことは、ある程度汎用のシステムをつくったら、それをいろんなトラックメーカーに提供して、各社がFCVのトラックのバリエーションをつくっていかれることになりますもんね。 寺師:ええ。そういうフィッティングは、他メーカーの新車ベースの話もあるんですけれども、国だとか市だとか地域だとか、そういうところが運用中の車両を使ってやりたいという声もあるんです。自分たちもこういう町づくりしたいっていうのが、これからどんどん出てくると思うんですよね。エネルギープランはその中でも重要です。そういうときに、じゃあトヨタが全部お手伝いして回れるかっていうと無理です。その地域地域、例えばその国だとかのやっぱりエンジニアリング会社と一緒になって、ノウハウも含めてお使いいただくと。いろんなお話をいただくと結構うれしくて、うちのエンジニアは真面目なもんですから全部対応しようとするんですけど、最後に問題になるのはそんな時間、誰が持っているんだみたいな話になって、いつもそこのとこで尻すぼみになってしまうんで。