リモートワークの生産性は実は低かった。オフィスの“Hotelification”はリモートワークに慣れた従業員を呼び戻せるか?
業績を上げる従業員は学習、交流、専門能力の開発に時間を注ぐ
企業側にしてみれば、職場環境を刷新するのであれば、エンゲージメントの高い従業員の働き方を反映したいと考えるのは、自然なことだろう。 米国を本拠地に世界57カ所に展開する、建築・デザイン・プランニング会社、ゲンスラー・リサーチ・インスティテュートが毎年行っている『ワークプレース・サーベイ』は、米国の職場の状態を調査・分析した報告書だ。 同報告書の2024年版によると、エンゲージメントが高い従業員が個人で作業する時間は、1週間のうち34%。エンゲージメントが低い従業員の44%と比較すると少ない。ではほかに何をしているかというと、学習、交流、専門能力の開発に多くの時間を充てているという。これらは、エンゲージメントが高い従業員の71%にとって、業務遂行上重要なことだという。 また高い業績を上げるチームは、81%の割合で、職場でチームメイトと共に座り、仕事をする傾向がある。つまり、オフィスはチームメイトと協働する大切な場所という位置づけであり、出勤するのは、対面で行うチームミーティング、チームメイトと同席すること、同僚との交流のためなのだ。 従って、求められているのは、「一人で作業する」「対面で他の人と作業する」「他の人とバーチャルで作業する」「学習する」「交流する」と、5つの作業モードをすべて実現できるオフィスということになる。 高業績を上げる人は、そうではない人の3倍以上の割合で、オフィス勤務を個人の健康と幸福、仕事の満足度、ワークライフバランス、キャリアアップにプラスの影響を与えていると評価している。 オフィスの立地については、高業績を上げる企業の従業員は、介護サービス、市民社会スペース、文化的空間など、個人のライフスタイルのニーズに応える施設に、頻繁にアクセスする傾向があるのを踏まえて、都市中心部が好まれる。 『ワークプレース・サーベイ』は、今、従業員が求める理想の職場像を、「働くスペースが美しく、オープンな雰囲気で、新しいアイデアを生み出すためのインスピレーションが感じられる職場」だとまとめている。