ネタニヤフ首相に逮捕状、ICC加盟国に拘束義務で外交制約…非加盟の米国は批判
国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は21日、パレスチナ自治区ガザへの攻撃は戦争犯罪と人道に対する罪にあたる疑いがあるとして、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相に逮捕状を発行した。イスラエルの国際的孤立が深まり、外交が制約されるのは必至だ。(ブリュッセル支局 酒井圭吾、エルサレム支局 福島利之、村上愛衣) 【図解】イスラエル・ハマス・米国…ICCの逮捕状請求を巡る構図
ICCは21日、「ガザの民間人への意図的な攻撃を指揮した戦争犯罪に関して、刑事責任を負うと信じる十分な根拠がある」との声明を出した。米欧との関係が深い国の首脳に対する逮捕状発行は初めてとなる。
最大の効力は、124の加盟国・地域に義務づけられている身柄の拘束だ。同じく逮捕状を出されたプーチン露大統領は加盟国のモンゴル訪問時に身柄を拘束されなかったが、南アフリカやブラジルへの訪問は控えた。
ロイター通信によると、オランダやアイルランド、スペインなどは身柄拘束の協力義務を定める「ローマ規定」の順守を表明した。英仏はICCの判断を尊重しながら、身柄拘束には踏み込まなかった。
これに対し、ICCに加盟していない米国のカリーヌ・ジャンピエール大統領報道官は21日、「検察官が拙速に逮捕状を請求し、決定につながった手続きのミスを深く懸念している」と批判した。米下院は6月、逮捕状を請求したICC関係者への制裁法案を可決している。
ICC幹部は「制裁が発動されれば、ICCは機能停止する」と危機感を示していた。ただ、主任検察官が請求した逮捕状の発行を見送れば、ICCの存在意義や法の支配が揺らぎかねないとの懸念も強かった。
ネタニヤフ氏は21日、「反ユダヤ的な決定だ」と反発し、「(ICCが所在する)ハーグでの偏見に満ちた決定が、イスラエル国民を守るための行動を妨げることはない」と強気の声明を出した。イスラエル外務省の元法律顧問エレン・ベーカー氏は読売新聞の取材に「ICCは信頼できない情報に基づき事実を認定した。政治的な決定でICCの信頼を損なう」と指摘した。しかし、逮捕状により、ネタニヤフ氏はイスラエルに「閉じ込められる」(地元紙)ことになり、ガザやレバノンの停戦協議で自由に外遊できなくなる。